研究課題/領域番号 |
19K13921
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
阪口 毅 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (20817209)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | コミュニティ / 移動性 / 領域性 / 境界 / 砂川闘争 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、都市社会においてコミュニティの三つの位相(関係的・制度的・象徴的位相)が相互連関し「一時的な体制」を形成する過程を分析することで、コミュニティの領域性に周期性や変動をもたらす歴史社会的条件を明らかにすることにある。本研究から導かれる理論的成果は、制度分析、ネットワーク論、構築主義へと分離したコミュニティ論の再統合を推進するものである。 そのための事例として東京郊外にある立川・砂川地域における「砂川闘争」以前/以降の複数の「集合的な出来事」を対象に、歴史社会学的な研究を行ってきた。 2019年度は、大きく3点の調査研究を遂行してきた。第1に、市民グループHの活動への参加型調査の継続である。毎月1回の定例会への参加の他、活動の担い手の一人としての役割を担い、フィールドワークやシンポジウムへの企画段階から参加することによって、日誌、会議資料、チラシ、パンフレット等の一次資料の収集にあたってきた。 第2に、立川・砂川地域および砂川闘争に関する地誌資料の網羅的・系統的収集である。とくに当該地域のある立川市では市史編纂事業が進行中であり、事業に関わるインフォーマントとも連絡をとりつつ、資料収集にあたってきた。 第3に、砂川闘争当事者が保管する史資料の調査である。市史編纂事業のスタッフ、学芸員らの助言を得ながら、8月と12月に、インフォーマントの敷地内にある倉庫の調査を行い、砂川闘争当時の貴重な一次資料(日誌、チラシ、私信、署名簿等)を多数発見することができた。史資料のクリーニングと並行して調査目録を作成した。史資料を研究に活用するための詳細目録の作成が、次年度の最優先課題となる。 なお当該研究の前提となる理論的枠組みに関しては、論文「移動性と領域性のジレンマを超えて」新原道信・他編著『地球社会の複合的諸問題への応答の試み』(2020年1月、中央大学出版部)にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた3つの内容に即して述べる。 (1)市民グループHの活動への参加型調査について:当該団体のほぼすべての活動に参与し、担い手の一人として網羅的に一次資料を収集することができた。インフォーマントとの協力関係を構築することができたので、次年度以降、インタビュー調査等さらに踏み込んだ調査を進めたい。 (2)立川・砂川地域および砂川地域に関する資料収集について:市販されており容易に入手可能な範囲の資料はほぼ網羅できた。ただし希少文献や一次資料に近い扱いの文書に関しては、存在確認に留まったものもある。 (3)砂川闘争当事者の保管する資料調査について:インフォーマントの敷地内にある複数の倉庫のうち、3/4ほどの調査が完了した。家財等が大部分であったが、砂川闘争当時の貴重な一次資料の存在を確認し、クリーニング、調査目録の作成等ができた。120サイズの段ボール14箱分ほどの文書資料を保護することができた。一点ずつの詳細な調査と研究利用を可能とするための詳細目録の作成が今後の課題として残されている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は、フィールドリサーチを主軸とするため、新型コロナウイルスの感染拡大および緊急事態宣言の継続によって、調査計画の大幅な遅れ、見直しが必要となっている。 (1)市民グループHをはじめとする参加型調査に関しては、Web会議等への参加を継続し関係構築に尽力すると共に、Zoom等web会議システムを使用してのインタビューに着手したい。 (2)立川・砂川地域および砂川地域に関する資料収集に関して、古書店等で入手可能な部分については新型コロナウイルス感染拡大の影響は少ないが、行政資料や郷土資料等については市役所・市立図書館等の使用が制限されているため、まずは前年度に収集した資料の分析を中心に行っていく。 (3)砂川闘争当事者の保管する資料の分析と調査目録の作成に関しては、インフォーマントと直接接触する必要がなく、また申請者は近隣地域に居住しているため、新型コロナウイルスへの感染リスクを減じた形で、研究遂行が可能と考える。今年度はこの部分を主軸に研究を推進していく考えである。その成果はインフォーマントと協議のうえで、目録として発行する計画である。 以上の調査研究の中間報告を、まずは所属機関の紀要論文や研究ノートの水準で蓄積し、次年度以降に学術論文として発表する予定である。
|