研究課題/領域番号 |
19K13922
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野坂 真 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (10801798)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コミュニティ / レジリエンス / 持続可能性 / ライフスタイル / 東日本大震災 / 津波 |
研究実績の概要 |
2019年度は、既往災害に関する文献研究を通じ、東日本大震災津波の被災地域を中心事例に、地方の地域社会がいかに被災し復興していくかを分析するための参照点を抽出し、現地調査で得た情報も活用しながら、分析を試行してきた。具体的には、雲仙普賢岳噴火災害、阪神淡路大震災、新潟県中越地震などに関する先行研究を調べて参照点を抽出した上で、震災前/被災~応急対応期/仮復旧期/復興期、という災害からの復興過程を4段階に分け、それぞれの段階において岩手県大槌町で何が起こっているかを、公開されているドキュメントや統計データ、研究者へのヒアリング等を中心に整理した。その成果は、2019年10月に開催された日本都市学会や日本社会学会、同年12月に開催されたシニア社会学会「災害と地域社会」研究会にて学会発表している。また、岩手県大槌町に9回、宮城県気仙沼市に4回出張し、のべ約50名の、地域集団のリーダーたち、行政機関、支援団体、住民にヒアリングを行った。さらに、2019年8月には、大槌町内の災害公営住宅の全入居者を対象としたインタビューと質問紙調査のミックスメソッドによる調査を共同企画し、これに参加した(岩手大学、専修大学、明治学院大学との共同企画調査)。これらの調査結果の一部は、2019年10月に早稲田大学総合人文科学研究センター『WASEDA RILAS JOURNAL』No.7に掲載された論文「東日本大震災後の岩手県津波被災地域におけるアーカイブ活動の経緯と課題─ 大槌町安渡地域アーカイブプロジェクトを中心事例として─」にて発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた2019年度における研究スケジュールは、①既往災害に関する文献研究や防災や復興の専門家へのヒアリングによる参照点の抽出、②調査対象地域に関する文献・統計資料などの収集、災害過程におけるフェーズごとの状況の整理、③住民層レベルの分析のため現地調査を実施、特に健康上の問題により調査が困難になると予想される比較的高齢な層(60歳代以上)に聞き取り、であった。①、②に関しては、雲仙普賢岳噴火災害、阪神淡路大震災、新潟県中越地震などに関する先行研究を調べ、1)災害復興を長期的な復興課題の変容過程として捉える、2)個人と社会との間のメゾレベルで起こる事象に注目する、3)地域のライフスタイル像に基づく場の複合的な機能に着目する、といった参照点を抽出した上で、震災前/被災~応急対応期/仮復旧期/復興期、と災害からの復興過程を4段階に分け、岩手県大槌町において何が起こっているかを、文献・統計資料などを中心に整理した。その成果は、2019年10月に開催された日本都市学会や日本社会学会、同年12月に開催されたシニア社会学会「災害と地域社会」研究会にて学会発表している。③については、2019年度内は岩手県大槌町に9回、宮城県気仙沼市に4回出張し、のべ約50名の地域集団のリーダーたち、行政機関、支援団体、住民にヒアリングを行った。また、大槌町内の災害公営住宅全入居者を対象としたインタビューと質問紙のミックスメソッドによる調査を共同企画し、参加した(岩手大学、専修大学、明治学院大学との共同企画)。これらの調査結果の一部は、2019年10月に早稲田大学総合人文科学研究センター『WASEDA RILAS JOURNAL』No.7に掲載された論文「東日本大震災後の岩手県津波被災地域におけるアーカイブ活動の経緯と課題─ 大槌町安渡地域アーカイブプロジェクトを中心事例として─」にて発表している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度における研究スケジュールは、①文献調査と統計情報の収集・整理を継続、②住民層レベルの分析のため現地調査の実施、特に比較的若年の層(50歳代以下)に聞き取り、③中間成果を全国レベルの国内学会で発表、となっている。①は、特に東日本大震災から10年目に向けて刊行されるであろう、研究者による書籍や論文(社会学に関連する分野を中心に)、各市町村や支援団体、地域集団による災害記録誌や活動記録誌、地元紙・地元誌をふくめた各新聞社や各出版社による特集記事や特集号等に注目しながら、情報収集・整理を行う。②は、新型コロナウィルスの感染拡大防止に注意を払う必要があるため、年間での現地への出張回数は減らし、郵送調査やオンライン会議ツールを用いたヒアリングも併用して調査を進めていく。現時点で、震災後に盛岡市への長距離移住を経験した被災者への質問紙調査(郵送配布・郵送回収)を実施することを計画している。③は、現時点で2020年8月開催の日本地域社会学会での学会報告にエントリーしており、同年9月投稿期日の査読付き論文にも投稿予定である。前年度中に行った調査・研究の中間成果を報告する内容となっている。同時に、博士論文として中間成果をまとめる作業を前倒しで行う予定である(当初計画では2021年度に本格着手だった)。これらを通じ、大槌町と気仙沼市を比較分析する視点も持ちながら、東日本大震災津波の被災地域を中心事例に、地方の地域社会がいかに被災し復興していくかを、社会学的な「復元=回復力」概念に注目してより詳細に分析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月時点で、新型コロナウィルスの感染拡大への懸念が高まっており、3月中旬以降の出張を行わなかったため、1回分の現地調査出張費を2020年度に繰り越している。2020年6月時点でも、上記の懸念は継続しており、これまでの調査結果を分析するために使用するPC等や、博士論文執筆過程における参考文献等の購入費に充てる。
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