研究課題/領域番号 |
19K13926
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研究機関 | 名古屋産業大学 |
研究代表者 |
松下 奈美子 名古屋産業大学, 現代ビジネス学部, 准教授 (00743642)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 家計所得 / 留学 / 越境移動 / 高等教育 / 国際労働移動 / 東アジア |
研究実績の概要 |
2022年度は中国と韓国の2か国について、資料分析と調査研究を行った。中国はこの20年間で飛躍的な成長を遂げ、かつての労働力輸出大国一辺倒だった時代から、現在では世界中の優秀な人材が中国を目指すようになってきている。中国の人材送り出しの変遷は、今後他のアジア諸国が辿るであろう軌跡と考えられるため、日本で就職する人材の予備軍である中国人留学生の動向について検討を行った。 近年、外国人学生にとって留学先としての日本の魅力は低下していると言われつつも、来日中国人留学生は依然として増加傾向にあるという現状を説明するために、中国の世帯収入に着目した。世帯収入が15万元~30万元(日本円で240万円~480万円)の所得階層になると、子供を留学させたいという動きが出てくることを、統計的に説明した。 かつて、国費留学生として来日し、先進国の技術を学び母国に持ち帰って発展に役立てるという意識は完全に過去のものとなっている。中国から日本への移動は、個人の価値志向やキャリア形成といった動機に基づいたものへと変化していることを明らかにした。 韓国については、韓国政府が推進する若年人材海外送り出し機関にインタビュー調査を行った。韓国のスタートアップ企業の待遇が日本企業を上回っていることや円安などの要因が重なり、日本へ移動したい若年人材は減少傾向にあることが明らかになった。特に、理系の学生は韓国内での就職が過去と比較すると条件が良くなっているため、日本への移動を選択しない層が増えている。一方文系の学生は依然として韓国内での就職が困難なため、一時的な回避行動としての国際移動がキャリアの選択肢の1つとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年の夏までは新型コロナウィルスの流行により、海外渡航が制限されていたため、海外調査ができなかった。韓国での調査が2022年11月となり、当初の予定から大幅に遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は研究最終年度として、これまでの研究成果を体系的に整理し、若年高度人材の国際労働移動を促進する要因と移動を抑制する要因についての理論的な説明枠組みを提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度前半に予定していた中国と韓国の海外出張が渡航制限により行けず、2022年度の後半に韓国にしか行けなかったため、海外調査旅費として確保していた予算が使用できなかった。
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