2020年からの新型コロナウィルスの世界的な感染拡大によって大幅に遅れていた本研究も、最終年度として、研究実績をまとめた。 最終年度となる2023年度はおもに研究成果を書籍にまとめる作業を行った。 中国の大学を卒業後、日本で就職したい若年人材が直面する参入障壁には、言語以外にもいくつかの重要な制度的障壁があった。日本で就労する上では採用面接時に高い水準での日本語能力がいまだ必須であり、英語での採用面接を受けられる会社は多くはなかった。また、中国の学年歴と日本の学年歴が異なるため、日本の企業の年間採用スケジュールのちょうど谷間の時期に中国の大学を卒業するため、入社の時期が最低半年、場合によっては内定から入社まで1年半かかることもあり、入社までの意欲が低減することも明らかになった。 また、日本独特の日本型雇用システムも中国の若年人材にとっては障壁となっていた。 韓国の若年人材の日本への移動も高い日本語能力が求められているのは中国と同様であるが、韓国から日本への移動は、韓国政府や政府傘下の送り出し機関が送り出しシステムや送り出し支援政策、制度を用意しているため、中国と比較すると移動が容易であった。 高等教育機関での専攻が文系の場合、日本語能力は高いが職務に直結する学びではないケースも多く、日本での就職活動でやや苦労していることがわかった。理系人材の場合、専攻が情報通信や電子、電気など日本企業でのニーズが高い専攻、学位を持っていても、日本語ができない人材の場合、高い割合で希望の職種、企業から内定を得られずにいた。もっとも内定がとりやすい人材は、理系で日本語ができる人材であるが、この層はボリュームとしては大きくないため、人材と企業の双方でニーズのミスマッチが生じていた。
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