申請者は、現代日本の社会運動における周辺化や排除を分析するに当たり、第一には運動文化から女性や若年層という少数派が周辺化され、排除される過程を論じてきた。具体的にはActivist Identity概念から日本の社会運動・運動家の事例を検討した。日本のActivist Identity形成にあたっては、外部からの社会運動をめぐるまなざしも大きく関わっている。 マイノリティである社会運動従事者が中心的な運動参加者の形成する組織文化・下位文化に馴染めず、場合として周縁化されたり、排除されてしまうといった、欧米の先行研究に見られる要素は日本にも当てはまる。申請者はとりわけ若年運動参加者と女性運動参加者を事例にこの点を明らかにした。 また、とりわけ若年層の運動参加者は、陳情やデモといった積極的な政治参加に「怖い」という印象を抱いており、そのイメージは1970-80年代に「若者」時代を送った親世代から強く継承される。負のイメージが社会運動への参入障壁となるほか、同世代の社会運動不参加者から投げかけられる揶揄や攻撃が、社会運動ないしその従事者に対するネガティブな印象を構築し、従事者に内面化される要因となる。場合によっては運動の継続を阻むこともわかった。 社会運動への不参加や継続を困難にする要因として、目標への不合意や参加のための資源不足ではなく、社会運動に対する明確な冷笑・揶揄・攻撃の文化が存在する。こうした実態は欧州ではなかなか共有されず、日本にとりわけ強く見られるのではないかという示唆は、招待講演等における海外の日本研究者・社会運動論者との議論から明らかになった。
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