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2023 年度 実施状況報告書

里親支援についての日伊比較研究:〈脱施設化〉の社会的背景の解明に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 19K13932
研究機関京都大学

研究代表者

藤間 公太  京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60755916)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワード社会学 / 里親支援 / 社会的養護の〈脱施設化〉 / 日伊比較研究
研究実績の概要

新型コロナウイルス感染拡大により、国内外での対面での調査の実施が困難な状況が続いている。それゆえ、文献サーベイと前身の研究プロジェクトで行った調査で得たデータの二次分析、さらに政策文書等の分析を実施することにより、中間的な成果を継続して公表している。
2023年度においては、社会的養護をめぐる諸施策が前提とする想定、特に「社会的養護の環境を「家庭」に近づけるべき」との主張について、改めて批判的な検討を行った。このような主張の問題は(1)保護者、特に母親にケアの負担が集中する「家庭」のような環境において、ケアラーが直面する困難が看過されてしまうこと、(2)保護者の下で育つ子どもと社会的養護を受ける子どもとの間で、受けられるケアや教育のオプションをめぐる格差が拡大するおそれがあること、(3)「少人数の大人で少人数の子どもをケアする」というあり方が強調されるあまり、本来は多様より多様でありうるケアのあり方を検討する視野が制限されること、(4)「社会的養護の家庭化」という主張が、しばしば誤った現状認識のもとになされていること、(5)「家庭」をモデルとすることで、社会的養護を受ける子どもや、その子どもたちを支援する社会的養護の担い手たちを不当に貶めてしまう危険があること、という問題がある。さらに、これらの主張は十分な根拠を伴っているわけでもない。ここでいう根拠とはたとえば、家庭養護出身者と施設養護出身者とのそれぞれを対象に、現在の暮らし向きや身体の健康、メンタルヘルスの状態などに関する調査を行い、結果を比較することなどを指すが、そうした試みは体系的には行われていない。
以上の検討の結果を踏まえ、日本の社会的養護政策が依拠する演繹型の思考がさまざまな問題を帰結していることを指摘した。今後は帰納型思考にもとづく政策策定へと転換していく必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナ禍の影響は緩和されつつあるものの、関係機関との折衝には引き続き課題があり、前年度に引き続き海外調査は実施できなかった。一方、代替的に行った理論研究に関しては成果が刊行されるなど、遅れを取り戻しての進展が認められる。

今後の研究の推進方策

今年度は最終年度に当たるため、延長期間も含めた5年間の総括を行う。主として理論的な検討を主とし、日本の社会的養護の現状と課題、それらを帰結している演繹型思考が生成された背景について考察を行う。また、現地調査が実施できなかったことについては、方法論の面も含めて検討し、後続プロジェクトに向けた示唆を得ることを目指す。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ禍の影響で調査実施が困難になったことを受け、研究期間を延長したため。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 子どもをめぐる政策における家族主義――「家族」「家庭」の定義をめぐる困難と解としての「脱家族化」2023

    • 著者名/発表者名
      藤間公太
    • 雑誌名

      現代の社会病理

      巻: 38 ページ: 21-34

    • DOI

      10.50885/shabyo.38.0_21

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書評 野辺陽子[編]、元森絵里子、野田潤、日比野由利、三品拓人、根岸弓[著] 『家族変動と子どもの社会学:子どものリアリティ/子どもをめぐるポリティクス』2023

    • 著者名/発表者名
      藤間公太
    • 雑誌名

      教育社会学研究

      巻: 113 ページ: 113-114

    • DOI

      10.11151/eds.113.113

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] シンポジウム「性的マイノリティと『家族』」の概要2023

    • 著者名/発表者名
      藤間公太・三部倫子
    • 雑誌名

      家族研究年報

      巻: 48 ページ: 1-4

    • DOI

      10.14965/afs.48.1

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 「社会的養護の家庭化」にみる演繹型思考の課題2024

    • 著者名/発表者名
      藤間公太
    • 学会等名
      甲南大学人間科学研究所シンポジウム「「子育ての社会化」と「家庭的」養護の狭間で」
    • 招待講演
  • [学会発表] 〈経験知〉を可視化する――現場と研究の連携によるデータの活用例2023

    • 著者名/発表者名
      藤間公太
    • 学会等名
      国立保健医療科学院 「令和5年度児童相談所の連携機能強化に向けた中堅職員研修」
    • 招待講演
  • [図書] 家族社会学事典(分担執筆範囲:「施設養護の展開と課題」)2023

    • 著者名/発表者名
      日本家族社会学会(編)
    • 総ページ数
      704
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      4621308343
  • [図書] 社会学で考えるライフ&キャリア(分担執筆範囲:「第13章 ひとり親として日本社会をどう生きるか」)2023

    • 著者名/発表者名
      西村純子・池田心豪(編)
    • 総ページ数
      252
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      4502464015
  • [図書] 社会的養護の社会学2023

    • 著者名/発表者名
      土屋敦・藤間公太(編)
    • 総ページ数
      236
    • 出版者
      青弓社
    • ISBN
      4787235249
  • [学会・シンポジウム開催] 第27回教育学研究科セミナー/第51回「知的コラボ」の会2023

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公開日: 2024-12-25  

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