研究課題/領域番号 |
19K13937
|
研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
川西 智也 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 講師 (30824734)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | アウトリーチ支援 / 認知症 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、認知症初期集中支援チームの全市町村設置など実践が広がりつつある認知症高齢者へのアウトリーチ支援について、以下の三点を明らかにすることにある。 ①アウトリーチ支援の過程のなかで、援助職が抱える困難の構造を明らかにする。 ②アウトリーチ支援に伴う困難に対し、援助職がどのように対処して支援を展開させているかを明らかにする。 ③アウトリーチ支援に求められるスキルを同定し、援助職による実践に資する知見を提供する。 ①に関連して、文献研究を行った。その結果、支援上の困難の背景として、援助職のスキルの問題、必要な支援と高齢者本人の意思との乖離、精神医療の知識やコミットメントの不足が明らかとなった。また、アウトリーチ支援はコストのかかる支援を下支えする職場環境や、アウトリーチを担う機関についての地域への周知などの前提の上に成り立つ支援であることが明らかとなった。本知見は論文として『社会福祉研究』に掲載された。 ②と③に関連して、心理専門職との議論を重ねた。アウトリーチ支援の現場では、対象となる高齢者のアセスメントの一環として認知機能を含む心理機能のアセスメントが求められる。だが、医療機関に受診する患者の心理アセスメントとは関係性も状況も異なるため、アセスメントとしての心理検査の導入は必ずしも容易ではない。そこで、生活の場で行うアセスメントに焦点を当て、デイケアや高齢者福祉施設、訪問支援などでの臨床経験のある心理職と議論を重ねた。そのなかで、高齢者の行動観察や会話、生活環境の観察に基づくアセスメントスキルの必要性が浮かび上がった。本知見については心理臨床学会のシンポジウムで発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度にデータ収集を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行状況が緩和せず、研究協力者とくに地域包括支援センターや初期集中支援チームなど、アウトリーチ支援に従事する機関の専門職の協力を得ることに難航し、データ収集に着手できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように研究協力者の確保が難航している一方で、高齢者支援に従事する心理専門職とのつながりは広がりつつある。このつながりを活用しつつ、引き続きアウトリーチ支援に従事する専門職の研究協力者の選定を進めていく。遠方の研究協力者には、オンラインによるインタビューの実施を検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、参加する学会がオンライン開催となったため旅費がかからなかったこと、他の予算から費用を捻出した学会参加がいくつかあったこと、データ収集に着手できなかったために謝金や人件費が生じなかったことによる。 2022年度にはデータ収集を行い、出張費(対面によるデータ収集の場合)・謝金・人件費等に使用する予定である。
|