研究課題/領域番号 |
19K13940
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
日野原 由未 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (90783556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 外国人材 / ソーシャルワーカー / 福祉サービス / トランスナショナル / cultural competence / adult social care |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、クライエントの人種的・民族的多様性という観点から福祉サービス供給に求められる今後の再編のあり方を明らかにすることである。相談援助の観点から、外国人クライエントへの福祉サービス供給において生じる新たな質的に多様な需要への対応の必要性を指摘し、海外の事例としてイングランドの自治体における実践を踏まえながら、外国人ソーシャルワーカーの活用も念頭に置いて、今後の福祉サービスに求められる再編を明らかにする。 上記の研究目的の下で、2020年度はイングランドの成人社会的ケアにおける外国人材の受け入れについて検討した。イングランドの成人社会的ケアでは、看護師やケア人材、ソーシャルワーカーなどの専門職人材として外国人材を受け入れてきた。これらの外国人材は、地域の人口の人種的多様性に対応した規模で配置されていることを明らかにした。また、外国人材の出身国や国籍から、これらの人材の多くは英連邦とEU出身者で占められていることがわかる。 2020年度の研究においては、イギリスのEUからの離脱=Brexitの実施が、こうした外国人材に及ぼす影響について検討した。イギリスは2020年1月31日にEUから離脱した。国民投票によりBrexitが決定した2016年6月以降、EU市民のイギリスからの出国が続いていることはこれまでに明らかにしたが、実際の離脱後には大きな混乱は見られないことを示した。これは、1年間の移行期間「transition period」が設けられたことによる影響として考察した。2020年度の研究から、2020年12月31日の移行期間終了後の動向について注視していく必要があると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、2019年度末に外国人のソーシャルワーカーが活躍しているイングランドの地方自治体にヒアリングを行い、それに基づいて事例研究を実施する予定であったが新型コロナウイルス感染拡大の影響により渡英することができなかった。2020年度も現地でのヒアリングは実施できず、またメールインタビューも試みたが現地の自治体の状況から実施に至らなかった。そのため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メールインタビューあるいは現地でのヒアリングが実施できる状況になり次第、調査を行う。また、イギリスを対象とした研究と並行して、本研究課題で掲げた3つ目の研究項目である「日本の福祉サービスにおける外国人材受け入れの現状と今後の展望」についても研究を進める。日本の福祉サービスにおいて、外国人クライエントを想定した際に必要な制度設計について検討する。 最終的に、本研究課題で掲げた4つ目の研究項目である「トランスナショナルな福祉サービス供給体制構築の展望」についても、論文等でまとめることとする。国民国家を前提に発展を遂げてきた福祉国家の下で供給されてきた福祉サービスの新たな局面を、理論的な観点から分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により、予定していた海外での現地調査を中止したため。
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