今回の研究は災害発生時のみならず、平時から発災、そして復興のフェーズによって分断されがちである、被災者の生活に対するシームレスな包括的災害支援活動の実現へむけて、主に医療、保健、福祉の専門職間の情報の共有に注目した。被災者、特に要配慮者に対するシームレスな包括的災害支援活動を実現することを目指した。具体的には、医療、保健、福祉の専門職間での情報共有を行い、平時から発災、復興期までの包括的な災害支援活動を支えるためのICT基盤を開発することであった。この目的を達成するためには、具体的な実証と運用ワークフローの開発が必要である。 具体的にこの研究を進めるにあたって、当初から既に約10年間の稼働実績があり、医療保健福祉の連携と協働が行われている埼玉県利根保健医療圏の「とねっと」も採用しているLife Route EHR(Electronic Health Record)ソリューションに「災害」関連ページを追加した。その機能の有効性や課題を令和2年7月豪雨で被害を受けた熊本県人吉市、また令和6年元日におきた能登半島地震において検証した。 災害時情報項目を追加することで、発災後フェーズが変化した後も、そのソリューションに追加で入力できることにより、復興時にもそのデータを活用できるのではないかという意見を伺うことができ、発災後の様々なシーンの被災者(救護者)と支援者の連携支援を可能とした。また今回のデータをそのまま避難所での運営支援にも使えることも可能となり、複数の専門家観点のヒアリング(アセスメント)結果を記録でき、専門分野の見識と、同一人物に対する重なる基本情報ヒアリングの低減に向けて、今後提案していきたいと考えている。
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