研究課題/領域番号 |
19K13955
|
研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
三木 良子 帝京科学大学, 医療科学部, 講師 (70595404)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 精神障害者 / 労働環境 / 働きやすさ / 主観的評価 |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究実施計画の〈調査①精神障害者の就労支援を行う支援機関への量的調査〉を実施した。調査の目的は、精神障害者が働き続けることのできる労働環境を明らかにすることである。 【1】2019年9月:調査に先駆け、研究計画ではプレ調査を実施する予定であったが、計画を修正し公益社団法人日本精神保健福祉士協会の就労・雇用支援の在り方検討委員会の協力を得て、精神障害者が働き続けることのできる労働環境のブレーンストーミングとアンケート調査項目に関しての討論を行った。これらの結果をもとににアンケート調査を作成した。アンケート調査の作成にあたっては、厚生労働省が中小企業に実施した「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査」を参考にした。また、アンケート調査の作成にあたっては、厚生労働省担当者の了解を得ている。 【2】2019年11月~2020年2月:精神障害者の就労支援を行っている障害者就業・生活支援センター、区市町村就労支援センター等全国435か所に、「精神障害者が働きやすい労働環境に関するアンケート調査」を送付した。このアンケート調査は、支援機関向けと、当初の計画にはなかったが実際に一般就労している精神障害者に対してアンケート調査を実施した。2019年12月末を締め切りにしたが、最終的には2020年2月までアンケートの回収を行った。支援者から67(回収率15.4%)、精神障害者本人から60(回収率13.7%)の回答があった。 【3】2020年3月~現在:アンケートの回答の集計を終え、分析を継続しているところである。本アンケートでは支援者及び精神障害者本人に対して、研究実施計画にある②精神障害者のこれから実施予定であるインタビュー調査の可否も問うており、支援者10名と精神障害者本人15名が調査への協力が可能であるとの回答を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画では、2019年内にアンケート調査の実施と分析までを修了する予定であったが、アンケートの回収に時間がかかったため集計と分析も準じて遅れてている状況である。ただし、アンケートの実施にあたっては、精神障害者の就労支援を専門的に検討している公益社団法人日本精神保健福祉士協会の就労・雇用支援の在り方検討委員会と討議することで、アンケート調査項目への示唆を得ることができた。特に、当初は支援者だけを調査対象を考えていたが、精神障害者本人への調査についてはこの討議によって得られたものである。
アンケート調査については、支援者からの回収率が15.4%、精神障害者本人からの回収率が13.7%と低い結果となっている。回収率が低い要因としては、調査項目が多かったことと(10ページを超える)、また「働きやすい労働環境」といった主観的評価の調査であったため、取り組みが困難であったことも伺える。ただし、回収率が低くとも現在の精神障害者の就労環境やそれに対する満足度などを確認する意義ある調査であると考える。
さらに、アンケート調査に添えたインタビュー調査への協力への回答が予測よりも多く、全国にわたっている。働く精神障害者及び支援者への調査が可能との結果も得られた。本来であれば、2020年度初めにはインタビュー調査の依頼を行う予定であったが、今般の感染症による自粛のため、調査依頼も停止している状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年に実施したアンケート調査について、8月に開催予定であった日本職業リハビリテーション学会、11月の精神障害者リハビリテーション学会での研究発表を検討していたが、今般の感染症による自粛の一環で中止となっている。そのため、今年度は学会報告ではなく、「精神障害者の働きやすい労働環境調査」に関する論文の投稿が主たる成果発表となる。そのため、調査の分析を終え次第論文執筆にとりかかるものとする。
2020年度実施予定のインタビュー調査は、支援者10名、精神障害者15名の調査協力をとりつけている。こちらも同様に感染症の状況を確認しながら実施していく。遠隔でインタビューできるデバイスを使っての実施も考えたが、初めて調査する対象者には向かない方法であるため実際に現地に赴いて調査することを目指す。ただし、感染症の状況によっては2020年度内に完了できない可能性もあるため、適宜状況を確認しながら計画の修正を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の助成金では、アンケートのプレ調査を行う予定であったが、調査内容や項目等に関して日本精神保健福祉士協会の就労・雇用支援の在り方検討委員会との討議によって作成することができた。そのため、調査に関して少ない費用で実施されたことが次年度使用額を発生させた原因である。2020年度は、アンケート調査に関する事務的費用や全国的なインタビュー調査を実施する予定である。そのため、今回の次年度使用額を使用することができると考える。
|