本研究は、里子の安定したアタッチメント形成のために必要な、里親への養育困難感に対する支援のあり方を1年間の介入研究によって検討するものであった。5名の特別養子縁組里母(以後、里母)より協力が得られた。本研究の介入では、介入前に里母のアタッチメントをAdult Attachment Interviewにて測定した。里母の認知する子どもの問題行動の頻度とそれを「問題と感じるかどうか」を日本語版アイバーグ子どもの行動評価尺度(以下、ECBI)で介入毎に測定しながら、里母の養育困難感に対して心理的支援を毎月1回1年間通じて行い、その前後で、里子のアタッチメントをアタッチメントQソートに基づく観察法によって評価し、里母の育児ストレスをPSI育児ストレスインデックスで、養育効力感を日本語版Parenting Sense of Competence尺度で測定した。また、毎回の介入においては、里母が里子の気持ちに目が向くような介入を行った。 その結果、里母のアタッチメントパターンは5名中3名は安定型、2名はCCと評価されたが、いずれの里子も介入前後において里母との安定したアタッチメントを形成していることが推察された。里母の育児ストレスについては、標準データの平均値190点を下回ったのは2名のみであり、介入後に育児ストレス得点が低くなった里母は1名のみであった。養育効力感に関しては、介入前後で得点が高くなったのは2名で、「育児に関する効力感」に注目すると3名の得点が高くなった。里母の認知する養育困難感については、2名の里母が平均して臨床域と判定される子どもの問題行動の頻度を報告した。 介入後のインタビューでは、月1回の頻度や介入方法について、概ね協力者からは支持され、子どものことについて考える機会となったことが示された。また、ニーズの有無にかかわらず、面談を設定することの意義も見出された。
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