研究課題/領域番号 |
19K13959
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
中野 加奈子 大谷大学, 社会学部, 准教授 (30726047)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソーシャルアクション / エンパワーメント / ソーシャルワーク / 裁判アクション |
研究実績の概要 |
2021年度においても、コロナ禍の影響により予定していたソーシャルアクション参画者に対するインタビュー調査を実施できなかった。 そこで、本研究の調査対象でもある生活保護基準引き下げ違憲訴訟における原告団の形成過程の整理と、そこでの原告団のエンパワーメントの実態を「京都新・生存権裁判のあゆみ-判決の問題点と裁判アクションの意義-」と「生活保護裁判の現状と問題点」として二つの論文にまとめた。 この二つの論文では、提訴以降の原告団の形成過程を概観しながら、裁判で問われた制度的課題が原告の生存権を侵害し、彼らの社会参加の機会が奪われていると指摘した。その上で、困難な状況においても公的な制度である「裁判」を通して権利主張を行うことにより、弁護団や市民団体など多くのソーシャルアクションの担い手や、同じ立場の全国の原告ら繋がることが可能となり、裁判アクションへの参画者たちの尊厳回復に繋がっていく、と結論づけた。実際、敗訴を経験した原告は、これまでの経験から自らの権利性に自覚的になり、ソーシャルアクションの担い手として成長を遂げている。今後は、こうした裁判アクションの進展を捉えつつ、このアクションに参画する個人の経験をインタビューすることにより裁判アクションの内側から実態把握を行いたい。それにより、さらに多くの市民・専門職がソーシャルアクションに関与する意義を明らかにしたいと考えている。 また、海外でのソーシャルアクション参画者との実態把握に関連してSocial Work Action Network-International(SWAN-I)の活動に参画し、SWAN-Iが策定した「ソーシャルワーク・アクション・ネットワーク-インターナショナル(SWAN-I):ウクライナへの侵攻と戦争に関する声明 」を日本語訳した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響を受け、ソーシャルアクション参画者へのインタビューが予定通りに進んでいない。特に裁判アクションへの参画者には高齢者が多いなど、健康上の配慮が必要な状況で予定通りに進めることができなかった。 また、海外のソーシャルアクションの実態把握や実践交流についても、渡航することができないため、詳細な調査が行えない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
ワクチン接種が進んだこともあり、2022年度は、裁判アクションの原告らや支援者へのインタビューを行っていく。感染対策を十分に計りながら、原告や市民団体で活動する人々に対し、裁判アクションに至るまでの生活史と、裁判アクションにおける個人的経験を聞き取り、ソーシャルアクションの重要性と、参画の機会を幅広い市民に提供するための方策を検討する。 また、海外でのソーシャルアクションの実態把握を図るため、引き続きSWAN-Iの活動に関与しながら、日本と海外(欧米・香港)との比較検討を行い、日本でも応用可能なソーシャルアクションの方法を探る。 こうした実態調査を行いながらインタビュー内容の分析を進め、予定しているソーシャルアクションのテキストを作成することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍の影響を受け、インタビュー調査を行うことがほとんどできなかった。そこで、2022年は、感染対策を講じながらインタビュー調査を進めていく。また、インタビュー調査の分析内容については社会福祉学会で報告し、論文化を図る。以上のための経費等に使用する。
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備考 |
上記は、Social Work Action Network-Internationalによるウクライナ侵攻に対する声明文の日本語訳である。SWAN-Iでの会議に参加し声明文の作成に関与しその上で日本語訳を行い、それが当該ウェブサイトに掲載された。
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