研究課題/領域番号 |
19K13976
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
平田 祐太朗 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80770817)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 発達障害児者 / 家族支援 / 相互交流 / 効果評価 |
研究実績の概要 |
現在,昨年度より継続して相互交流支援プログラム実施により得られたデータを基に分析を行っている。参加者18名から得られた介入前,後のPOMS-2やClient Satisfaction Scale,自作した質問紙等の調査から得られたデータの分析を実施した。 その結果,プログラムの実施前後で発達障害児者をもつ保護者のPOMS-2における広範なネガティブな気分状態の改善(怒り-敵意,緊張-不安,抑うつ-落ち込み,疲れ)を確認することができた。このことにより,本プログラムの一定の効果を検証することができたと考えている。 一方,POMS-2の因子の中でも友好や活力といった肯定的な気分状態に対しては有意な結果は得られなかった。そのため,保護者同士の交流を支援するといった本プログラムの一部の目的の達成に関しては不十分な側面があると考えられる。今後プログラムの量や質を含めたさらなる改善の余地が示唆されている。 また,プログラムの実施前後のPOMS-2における気分状態の変化と,特に保護者が「子どものことをふりかえる」ことができたと評価することが有意な相関関係にあることことが示された。このことにより,特に子どものふりかえりを相互交流の中で行っていくことは,プログラム実施において重要な要素であることが示唆された。 しかし今後の課題として,「子どものことをふりかえる」ことが保護者自身でふりかえることにその重要性があるのか,それとも他の保護者も含めてふりかえることが重要であるのかに関しては未だ明かではない。そのため,今後はこのようなメカニズムについて,グループフォーカスインタビューなどの調査などを通した質的な分析を通してさらなる検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在,これまで得たデータや記録を用いて学会誌への投稿,国際学会での発表など研究成果の積極的な公表を試みている。 しかし,新型コロナウイルスの影響により,実施予定であった保護者を対象としたプログラム自体やグループフォーカスインタビュー,研究者間の打ち合わせの中止,延期,実施形態の大幅な変更などを余儀なくされた。当初想定していた形ではないものの,オンラインでの実施をトライアルで試みる必要があるなど大幅に実施形態自体の見直しが必要の中で実践活動を進めてきている。そのため,2020年度は当初想定していたデータの収集が困難であったため,当初の計画よりやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進については以下の2点を検討している。 1点目は,昨年度実施が難しかったグループフォーカスインタビューの実施を通したプログラムの効果や影響に対する長期的な効果や意義についての検討である。これまでは,実施後もしくは実施前後の変化といった短期的な効果に関する分析が中心であったため,今後は協力を得られる参加者からより長期的なスパンでの本プログラムの効果についてデータを得ることを予定している。また併せてプログラム実施の簡易なガイドラインを作成とそれに対するフィードバックを通して,社会へ発信を行いたい。 2点目は,引き続き国内外の学会における研究成果の発表である。既に2021 年度4月24日から26日に行われるInternational Psychological Application Conference and Trend 2021において発表予定である。このような取り組みを通じて日本国内に限らず幅広く発達障害児者の家族支援のあり方やプログラムについて検討を行うことでさらなるプログラムの改善と発展が期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において予定していた国内外の学会や調査など複数回の出張,また人件費や謝金などの支出がコロナウイルス感染症の影響により,計画通りの執行が困難であった。そのため,今後当初の予定を感染症の影響を見ながら執行を行っていく予定としている。
|