障害者の雇用促進や雇用継続に向けて,障害者と仕事とのマッチングの重要性が指摘されている。特に,事業所の採用担当が障害者の能力がわからないことによって採用行動に至らないという事例が多数報告されている。障害者の能力評価は,就労支援事業所が積極的に実践しているものの,就業先の職務との適合度を測るツールは乏しく,採用担当者の判断に委ねられている現状がある。さらに,不採用であった場合の不適合度は就労支援担当者や当事者にはフィードバックされにくく,その後の就労支援の目標設定を困難にしてしまう可能性も孕んでいる。その解決のため,本研究は就職先の職務内容を明らかにすることで就労支援のマッチング精度を高められる可能性があるという仮説のもと,職務分析チェックリストの活用とその効果を検証することを目的としている。具体的には,ILOが提唱している職務分析を参考に①作業特性(作業の難易度評価)と②職務要件の領域で構成する職務分析チェックリストを用いて,就職先の職務の可視化とその活用可能性を探る。 本年度は,昨年度に学術報告をした際のフィードバックを基に,職務分析チェックリストの活用法に関するリーフレットを作成した。それらを用いて調査対象とチェックリスト実施事例を増やすよう模索した。調査対象範囲を,当初の就労移行支援事業所や就業・生活支援センターだけでなくハローワークや障害者職業センター,実習やインターンを受け入れている企業に拡大したものの,事例の蓄積には至らなかった。
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