本研究は、福島県の吃音問題解決のため、アクションリサーチにより「吃音当事者および支援の実態と課題の把握」、「社会的認知の促進」、「支援システムの構築」の3つに取り組むことを目的としたものである。吃音を持つ者の悩みは、自殺を考えるほど深刻であるが理解されにくい。従来の福祉の枠組みでは捉え切れておらず、一貫した支援制度から取りこぼされており、さらに東北地方にはセルフヘルプグループのみならず吃音の支援機関も少ない。 県内のそのような実情から、「ふくしま吃音懇話会」という吃音支援団体を立ち上げ、言語聴覚士やことばの教室担当教諭ら支援者向けの講演会、吃音当事者の交流会を開催してきた。コロナ禍においてはオンラインでの講演会、交流会を行ってきた。吃音啓発リーフレットについても県内の公共施設、医療機関への設置を依頼し、小・中・高校、ことばの教室、幼稚園・保育園・子ども園への配布を行った。 最終年度において、吃音当事者を対象としたインタビューを分析結果が、“東北地方における吃音当事者の課題と支援ニーズ-テーマティック・アナリシス法を用いた青年期当事者の語りの分析-“として「質的心理学研究」に掲載された。 県内において吃音の社会的認知はある程度進んだといえるが、その過程で、教育・保育施設や小学生以下の当事者家族からの要望も多く寄せられた。「ふくしま吃音懇話会」は中高生以上を対象として交流会を開催してきたが、今後、幼児や小学生を対象に支援に取り組む必要がある。 「ふくしま吃音懇話会」として活動する中で、県言語聴覚士会やことばの教室との連携がうまれており、本研究は吃音の支援システムの構築にも一定の役割を果たしているといえる。
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