研究課題/領域番号 |
19K13981
|
研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
櫻井 潤 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (10382508)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | オバマケア / メディケイド / ウェイバー / 政府間財政関係 / 地域医療 / 医療扶助 / テキサス / アメリカ |
研究実績の概要 |
2019年度の研究成果は以下の通りである。 第一に、2010年患者保護アフォーダブルケア法(以下「オバマケア」)におけるメディケイド改革の目的および制度の枠組みを明らかにした。この改革は、成人の無保険ワーキングプアへのメディケイドの対象拡大を州政府に義務化すると同時に、その拡大に要する医療扶助費の大部分を州政府への連邦補助金によって賄うという枠組みであった。しかし、後に連邦最高裁の判決によって対象拡大は州政府の裁量に委ねられる方式に変更され、メディケイドの実施形態、財政規模、政府間財政関係は州ごとに多様な展開を伴うことになった。それに加えて、オバマケアにおいては無保険者が多い非合法移民は医療保障の拡大および連邦財政補助の対象から外されることになった。 第二に、オバマケアにおけるメディケイド改革に関する先行研究の意義・限界を明らかにした。この改革については、2010年連邦法の制度研究、連邦法の政治過程の研究、州・連邦財政関係の研究が行われてきた。しかし、メディケイド改革が州政府の裁量に基づいて多様に展開されるという点に着目し、しかも州レベルおよび州内の各地域における医療ニーズと改革の関係、州・地方レベルの政策展開、州・連邦政府にとどまらず病院区、郡政府および医療機関にまで踏み込んだ財政システムの実証的な研究は行われていない。 第三に、オバマケア成立後における各州のメディケイド改革の動向を検討した。その結果、オバマケアに反発してこの法に基づくメディケイド拡大を実施しなかった州においても、ウェイバー制度を活用して無保険ワーキングプアにメディケイドの拡大を実施している州が存在していることが明らかになった。特に、州民に占める無保険者の割合が州の中で最も高く、非合法移民の無保険ヒスパニックが多く住むテキサス州は、非合法移民も対象とする独自の改革を実施していることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度にテキサス州の現地調査に着手する計画であったが、2019年度に入ってから研究協力者の職場におけるプロジェクトの遂行に要する業務量が当初の想定を超えて過重になったことに加えて、研究協力者が博士論文の執筆にいっそう注力せざるを得なくなった。これらの状況変化をふまえて研究協力者と協議した結果、聞き取り調査を含む本格的な現地調査は2020年度から開始することになった。それに伴い、2019年度の研究の進捗状況はやや遅れていると判断することが妥当であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの蔓延に伴う国内外の情勢をふまえて研究協力者と協議し、2020年度における研究の進め方を以下の通り工夫する。 第一に、国内で遂行することが可能な作業をできる限り優先して行う。 第二に、現地調査については、国内外の情勢を確認しながら研究協力者と柔軟に対応していく。 なお、新型コロナウィルスの蔓延に伴う国内外の状況が早期に改善すること見込めない場合には、現地調査の実施時期および実施方法を中心に、研究計画および研究機関の変更を慎重に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
第一に、テキサス州においては2019年度に延期することになった現地調査を含む2回の現地調査と、当初の研究計画に基づいて行うワシントンD.C.における1回の現地調査に要する旅費が必要になったため、当初の研究計画に比べると、テキサス州における1回分の現地調査に要する旅費が追加で必要である。 第二に、新型コロナウィルスの蔓延に伴う対応として、国内で実施可能な研究をできる限り前倒しで行うために、文献・論文・資料の収集や資料整理に要する経費を当初の研究計画よりも増額する必要がある。
|