研究課題/領域番号 |
19K13987
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
西岡 弥生 日本女子大学, 人間社会学部, 研究員 (30829403)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 子育て生活スキル / 伝統技能伝承 / 疑似家族的な共同生活 / サーバント・リーダーシップ / リスクとされるニーズ / 生理的欲求への対応 / 安全欲求への対応 / 社会的欲求への対応 |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず関連文献と【①伝承技能伝承の実践現場】のフィールドワークの調査結果を統合し支援策を検討し、学会発表を行った。本支援方法では、優劣の価値観のない非威嚇的な環境で、支援者と保護者が「子育て生活スキル」を媒介にお互いの生活経験や実践知を受け取り合いケアリング関係を構築し、保護者が支援者との関わりのなかで繰り返し実践し身に付けたスキルを、日々の子育ての予期せぬ状況に臨機応変に対応する「暗黙知」まで高めることが期待される。付随効果として、地域社会では「居場所・包摂・周縁化防止」機能、保護者には「自尊感情の回復・エンパワメント」機能が期待される。さらに、支援者に次世代育成の役割が獲得され、子育ての物語が共有される生成継承性の発達が促される可能性が示唆された。 次いで【①伝承技能伝承の実践現場】で若年層の女性が疑似家族的な共同生活のなかで技能を修得する際に、生活面も支援する育成者を対象に、半構造化インタビュー調査を実施し、サーバント・リーダーシップ(Greenleaf,R.K.1998)の分析枠組みで分析し、支援者の役割を検討し報告した。育成者は、子育て支援及び児童虐待防止の領域ではリスクと捉えられがちな要因をニーズと捉え、サーバント・リーダ―シップ10の特性のうちの【傾聴】【共感】【癒し】【納得】の手法を用いてニーズを引き出し生活基盤を整えていた。行き場のない母子に対しては【発見力】を活かし母子が安心して生活できる住環境とコミュニティを形成し、《生理的欲求》《安全欲求》に対応していた。次に育成者は、継承者を稽古場へと導き《社会的欲求》に対応していた。さらに、継承者の稽古での努力が承認され自信と収入につながる【人々の成長に関わる】仕組みを構築し、《承認欲求》《自己実現の欲求》へ対応していた。育成者の取り組みから、子育て支援及び児童虐待防止の領域での援用の示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度:【①伝統技能伝承の実践現場】でのフィールドワーク及びインタビュー調査は予定通り完了した。 2020年度:コロナウイルス感染拡大の問題のため、【①伝統技能伝承の実践現場】でのアンケート調査は調査対象の団体の活動が延期となり、研究期間中の再開も現実的に不可能な状況なため事実上中止と判断された。代替案として、2019年度のフィールドワークで収集した関係者の語りを分析対象にした調査結果を報告した。 2021年度:【②母親支援の実践現場】におけるフィールドワーク並びフォーカスインタビューは、コロナウイルス感染拡大の問題が続くなか実施は不可能だった。 フイールドワークの代替として、婦人保護事業関連団体主催の会員制Zoom会議への参加や(一社)子どもと家族のQOL研究センター等の団体の精神科医療者が家族・母親を支えるシンポジウム等への参加するなどして、調査活動を実施した。 フォーカスインタビューの代替として、特別養子縁組あっせん機関に在籍する主に妊産婦の方の支援に携わる支援者を対象に、半構造化インタビュー調査をZoom会議を活用して実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、【②母親支援の実践現場】で特別養子縁組あっせん機関において、主に妊産婦の方を支援する支援者を対象に実施した半構造化インタビュー調査で収集したデータを分析し、妊産婦支援での取り組みを検討する。最終的には、【①伝統技能伝承の実践現場】と【②母親支援の実践現場】から見出した知見を統合し、【③暫定的支援モデル】の知見を得ることを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた、母子支援現場におけるフィールドワーク並びフォーカスインタビュー調査を実施できなかったため、代替として特別養子縁組あっせん事業者の妊産婦対象の支援者の方にインタビュー調査の協力を依頼した。全てのインタビュー調査が、Zoom会議での実施となったため、旅費の必要がなくなり、次年度使用額が生じた。 データの補足が必要になった場合などのインタビュー調査費用や学会発表等を、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である。
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