本研究の目的は,地域生活を送る要支援・要介護高齢者の生活行動の意識を聴取する高齢者版生活行動意識アセスメント(以下,作業同一性質問紙)を開発することと,それに基づいたリハビリテーションサービスを提供するための支援方法を構築し,そのマニュアルを作成・公開することである. 前年度開発した作業同一性質問紙を用いた調査研究を実施した.目的は,地域在住要支援・要介護高齢者が肯定的な作業同一性を形成・維持するための要因を明らかにすることであった.対象は男性16名,女性23名の計39名であった.その結果,対象者の「今は若いときのようにはいかないが,よくやっていると思う」という認識や「何もないより,何かやることがあった方が良いと思う」という認識は生活行動の意識を安定させるために重要な要素であることが確認できた. 次に,作業同一性に着目した介入研究を実施するために,文献レビューによる検討を行った.その結果,対象者の望む具体的な作業の特定を行うこと,作業同一性の評価を通して作業同一性の状態をとらえていることがわかった.介入方針への活用としては,作業療法士は対象者の作業同一性の理解,作業同一性の形成,作業同一性を反映した作業の支援を介入方針として立案していることがわかった.このような評価と介入について,今回開発した作業同一性質問紙は,有用なツールであることが考えられる. さらに,本アセスメントを用いた事例検討を昨年度に続いて実施した.対象者は,通所リハビリテーションと訪問看護ステーションを利用する要支援・要介護高齢者であった.本質問紙で得られた情報は,対象者に適した生活行動の指導・援助に有用であることが示唆された.今後,さらに対象者数を増やしていくことが課題である.
|