研究課題/領域番号 |
19K13995
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
角崎 洋平 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (10706675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 特例貸付 / 償還免除 / 世帯更生資金 / 生活福祉資金貸付 / ストックの生活保障 |
研究実績の概要 |
第1に、生活困窮者にとっての包摂的貸付(福祉的貸付)のあり方を考えるために、コロナ禍における生活困窮者を主要な対象として実施された生活福祉資金特例貸付についての調査研究を進めた。とくに2022年度は2023年1月からの特例貸付の償還開始を見据えた時期であったため、償還体制や借受世帯支援、そして償還免除のあり方について研究成果を発表した。これまでの包摂的な金融制度の在り方についての研究成果を踏まえ、借受世帯の立場にたった柔軟なリスケジューリングも含めた金融的支援が必要であることや、貸付型支援の限界から給付型支援も必要であることも指摘した。また今後の償還体制の課題を確認するために市町村社協に対するインタビュー調査も実施した。インタビュー調査の成果については2023年度に発表予定である。 第2に、包摂的貸付の歴史的位置づけ、とくに戦後直後から現代までの生活福祉資金貸付(旧称 世帯更生資金貸付)の機能や位置づけの変遷について整理した。世帯更生資金貸付は、当初は生活困窮者の事業用資金を融資する制度としてスタートしており、いわば生活困窮者のストックの生活保障のための制度として位置付けられていた。その後、貸付使途は住宅資金や教育資金などに移ったが、世帯更生資金貸付の変質ゆえの変化というよりも、生活保障にとって必要なストックそのものが変質したゆえの変化であったと理解できる。そうしたストックのための貸付制度が変質したのは、リーマンショック以降の生活福祉資金改革によってであり、以降、生活福祉資金貸付は今日の特例貸付のような給付型のフローの生活保障を代替するものに変質した。こうした経緯やコロナ特例貸付等の実態を踏まえ、貸付型支援をストックではなくフローの保障に利用することの問題点も確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フランスの生活困窮者向け貸付に対する調査や、生活協同組合系貸付事業に対する調査は遅れているが、それ以外の調査研究はほぼ終えている。
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今後の研究の推進方策 |
年度前半はコロナ禍における特例貸付や生活協同組合系の貸付事業の総括的な調査を実施し、今後の貸付事業の在り方や体制整備について研究する。年度後半はフランスの生活困窮者向け包摂的貸付事業についての調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で計画していたフランスの生活困窮者向け貸付の調査が実施できていないため。次年度に使用予定である。
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