本研究は、社会的養護の施設における「家庭的養育」とはいかなる実践であるのかを、職員の専門性に基づいて解明するものである。2023年度の成果は以下の通り3点にまとめられる。 1. 里親委託率が全国で最も高い福岡市における社会的養護の調査。福岡市の子ども家庭支援センターにおけるインタビュー調査により、養育者のエンパワメント、養育者のソーシャルワークスキルの向上について分析を行なった。里親委託を進める上で目指される家庭像、里親への支援の仕組み、里親不調等への対応についても聞き取りを行った。 2. 先駆的な試みを行う児童養護施設におけるインタビュー調査。子どもの権利擁護を第一に掲げた養育を実践する児童養護施設において調査を行い、子どもの意見表明権の保障や、安定したアタッチメントに基づく養育、ライフストーリーワーク等の具体的実践について聞き取りを行った。 3. 施設保育士及び保育学生の専門性発達の分析。保育士養成課程において、子ども家庭福祉の視点をいかに導入し定着させるかについて焦点を当て、特に、子どもの権利や最善の利益の保障、保護者や社会資源との連携といった保育ソーシャルワークの視点をいかに指導するかについての分析を行った。本分析は、保育士養成課程から現場(特に児童福祉施設)への就職、専門職としての発達という一連のライフステージに位置づくものとして保育士の実践を捉え直すという、今後の研究の展望を開くものである。 本研究ではこれまで、乳児院、児童養護施設、里親等の社会的養育への調査に基づき、養育者の専門性について解明してきたが、最終年度である今年度は、社会的養育だけでなく、保育現場等で特別な配慮を必要とする子ども及び家庭への支援、特に子ども虐待や子どもの貧困への対応及び支援についても著書にまとめ、子どもの最善の利益の保障といった幼児教育や保育に関わる根本的な問いを深めた。
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