研究実績の概要 |
平成20年から平成30年までの人口動態調査死亡票のデータから,離島市町村の自殺EBSMRを作成し,市町村別の自殺EBSMRの分布を確認するとともに,人口規模4区分別,男女別の自殺EBSMRの違いを検討した。また,自殺死亡率と社会生活指標についてSpearmanの順位相関分析を行った。結果,離島市町村における自殺死亡率は,市町村の規模や人口の移動,複数市町村で構成されるなどの影響や男性の自殺死亡率の高さが強く影響されると考えられた。また,男性はコミュニティのつながりと都市化,女性は診療所,医師数などの身近な医療関連指標が関係することが推察された。 次に,離島市町村を対象としたアンケート結果では,自殺者について「把握している」と回答したのは55市町村,そのうち41市町村が「自殺者の具体的な情報」まで把握していた。市町村自殺対策計画の策定状況については,「策定済み」は37市町村で、策定年度は「平成30年度」が最も多く16市町村,「策定予定」は6市町村であった。また,「策定しない」理由として,「自殺者がいない」が最も多く4市町村,次いで「人員不足」があげられた。地域自殺対策強化事業を実施しているのは38市町村で,1市町村では6事業を実施していた。地域自殺対策強化事業のうち最も実施されている事業は「普及啓発事業」で22市町村,次いで「対面相談事業」18市町村であった。課題では,「マンパワー、専門職の不足」が最も多く,次いで「住民と近すぎて相談ができにくい」6市町村などがあげられた。以上から離島市町村では,自殺者について具体的な情報まで把握できるが,人口が中小規模の市町村が多いこと等からマンパワーや専門職の不足や住民と近すぎるため相談できにくい関係にあるため,普及啓発やゲートキーパーの養成などを通じて島全体で自殺に対する理解を深めていく必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度においては自殺率の低い離島自治体へのフィールドワークを予定していたが,昨年度同様,新型コロナウィルスの影響で離島自治体の多くが島外からの受け入れを不可としたため,調査が行えなかった。また,島ごとの人口動態調査死亡票の申請について住所が混在する島が多く,申請するのは困難であった。
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