研究実績の概要 |
離島市町村が実施している自殺対策の取り組みの現状と課題について明らかにすることを目的に昨年度実施した自殺対策に関するアンケートについて詳細な分析を行った。多くの市町村では自殺者の情報を把握し、自殺対策計画を策定(策定予定含む)している一方で自殺対策事業を実施していない市町村も多く存在した。市町村は「自殺予防のための社会的な支援体制の構築とアルコール対策」や「相談窓口の周知」,「ゲートキーパーの養成と若年層を対象とした研修」に重点的に取り組んでいた。また、市町村の課題では「地域の実情による自殺対策の困難さ」、「自殺対策窓口と他機関との連携体制」、「精神医療体制」があげられた。 離島では、担当する市町村職員の業務の多さや人材不足、限られたコミュニティにおける自殺対策の困難さ、精神科医療体制が脆弱であると考えられることから住民全体で自殺予防に向けて取り組む必要があると考えられた。 次に、平成21年から平成30年までの「警察庁の自殺統計原票を集計した結果」と「厚生労働省の人口動態統計」の2つの統計の差異について検討を行った。自殺統計では対象の10年間で1,465人であったが人口動態統計では1,398人と両統計で67人の差異が生じた。63離島市町村のうち自殺統計と人口動態統計が同数なのは15市町村で上回ったのは28市町村であった。市町村内での自殺として、①当該市町村内住民による自殺、②市町村外からの自殺、③市町村に住民票を有する者の当該市町村外での自殺が考えられることから、市町村内で自殺予防対策に取り組むためには、自殺統計と人口動態統計を整合させ自殺の実態を明らかにした上で、対策を検討することが望ましいと考えられた。
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