本研究の目的は調理施設及び家庭における食中毒のリスクを減らすことであり、本年度は黄色ブドウ球菌の高静水圧処理(高圧処理)による殺菌に食塩が及ぼす影響及びにぎり飯の主な汚染源である手や手袋の汚染状況を調べ、最終年度として研究をとりまとめ、成果発表することに努めた。 黄色ブドウ球菌は耐塩性の性質を持ち、高濃度の食塩存在下でも生存可能である。高圧処理前に食塩を添加した場合には、食塩添加なしの場合に比べ、菌が残存する傾向にあり、高圧処理による殺菌が弱まる傾向があった。KCl等の食塩以外の塩でも食塩を加えた場合と同様の傾向が認められた。一方で、高圧処理後に食塩を添加した場合には、高圧処理前に添加したものに比べ、菌数が大幅に減少した。高圧処理による黄色ブドウ球菌の殺菌に食塩を利用するには、高圧処理前ではなく高圧処理後に添加すべきであると考えられた。また、手袋の内側にも手と同程度の菌の存在が認められ、使用済み手袋の取扱いや手袋着脱の仕方も食品汚染に影響を与えうる要因であると考えられた。
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