研究実績の概要 |
初年度に行った病態モデルマウスへの投与実験の解析からフェネチルイソチオシアネート(PE-ITC)や1,3-ジフェネチルウレア(PE-UR)は抗炎症作用を示すことがわかった。腸内細菌叢は炎症性腸疾患との関連が指摘されていることから,最終年度では特に腸内細菌叢に着目し解析を行った。マウス盲腸内容物に存在する細菌の16S rRNA遺伝子を標的としたReal Time-PCRを行い菌組成を調べたところ、PE-ITC、PE-URはそれぞれ腸内細菌叢に影響を与えることがわかった。特にPE-ITCを摂取した場合の菌組成は他群に比べ大きく変化していた。さらに、腸内環境の良好な維持に資する短鎖脂肪酸を定量し組成を調べたところ、やはりPE-ITCを摂取した場合に他群と大きく異なることがわかった。PE-ITCを摂取した場合盲腸内容物重量が他群に比べ減少することが解剖所見から示されている点を合わせ、PE-ITCは抗炎症効果を有するが同時に殺菌効果も有しており、結果として腸内環境が大きく変化したものと考察している。より詳細な検証が必要であるものの、腸内環境に関する先行研究を参考にすると、PE-ITCがもたらす変化は健康増進には好ましくない可能性がある。一方、PE-URは、クレソン乾燥粉末を摂取した場合と比較して菌組成および短鎖脂肪酸組成に有意な差は認められなかったことから、PE-ITCのような殺菌効果はなく抗炎症効果による健康増進効果が期待できる機能性成分であると考えている。 個体レベルで確認された抗炎症作用を分子レベルで詳細に検証しその作用機序を解明するため、培養細胞を用いた実験を行った。これまでに培養細胞種および添加量の検討など予備的実験を完了した。抗炎症作用の分子レベルでの作用機序の解明を目指し、PE-ITCやPE-URを添加した細胞が産生する脂質メディエーターの網羅的解析を進めている。
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