研究課題/領域番号 |
19K14014
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研究機関 | 医療創生大学 |
研究代表者 |
久保田 耕司 医療創生大学, 薬学部, 客員研究員 (10626097)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 界面活性剤 / 皮膚バリア機能 |
研究実績の概要 |
界面活性剤の構造化学特性と皮膚バリア機能への影響には一般的な相関性は見出だせなかったため、個別の化合物および配合剤について皮膚バリア機能への影響評価とメカニズムの検討を行なった。 構造の異なる脂肪酸から調製した脂肪酸石鹸を用いて、分岐および不飽和の影響を皮膚バリア機能への影響を評価した結果、影響の強さの度合いが原料脂肪酸の融点と相関していることが見いだされた。このことは、Applied Science誌に投稿中である。 陰イオン界面活性剤に加えて、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン性界面活性剤について皮膚バリア機能への影響を評価し、さらにこれらの界面活性剤が皮膚バリア機能に影響するメカニズムを検討するために、タンパク質変性活性を評価した。本研究の基盤技術であるTransmission Index法による皮膚バリア機能への影響評価値のTI値と、タンパク質変性活性を組み合わせて、SBF-PDA Index値を新たに設定して皮膚バリア機能への影響のメカニズムを検討した結果、界面活性剤のイオン特性と皮膚バリア機能への影響には明確な相関性はなく、皮膚バリア機能に作用メカニズムがタンパク質への作用によるものとそうでないものが明らかになった。これはSkin Research and Technology誌に投稿するとともに、日本薬剤学会第35年会(誌上開催)にて発表した。また、この検討において、第4級アンモニウム塩型界面活性剤の一部に皮膚バリア機能への影響が大きいものが見いだされたため、COVID-19対策のための緊急報告をSkin Research and Technology誌にLetter to Editorとして投稿した。 ここまでの結果に基づき、イオン特性の異なる界面活性剤の混合による皮膚バリア機能への影響の変化およびそのメカニズムの検討は、現在実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
界面活性剤が皮膚バリア機能に及ぼす影響の主要なメカニズムは、角質細胞間脂質に対する作用であることは報告されおり、本助成研究でもそれを裏付ける結果が得られている。ただし、資質への作用が比較的弱いと考えられるものも見いだされており、詳細なメカニズムの解明が必要である。しかしながら、角質細胞間脂質への影響を測定・評価する方法が未確立で、遅れを生じている。また、界面活性剤の物理化学的性質と皮膚バリア機能への影響の相関を評価するために、既報に基づいて臨界ミセル濃度(CMC)測定を試みているが、適正に評価できる技術および解析評価法を確立できていない。また、界面活性剤の皮膚表面組織への吸着特性が皮膚バリア機能に影響する可能性があるが、吸着特性を測定・評価する技術を確立していない。
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今後の研究の推進方策 |
今後解決すべき技術的課題は、次の3項目である。 (1)界面活性剤の角質細胞間脂質への影響の測定・評価法の確立 (2)界面活性剤分子の物理化学的特性の測定と皮膚バリア機能への影響の相関の解析方法の確立 (3)界面活性剤の皮膚表面への吸着特性の実証 このうち、個体差等の影響を受けにくく既報の技術の応用が可能と考えられる(2)を優先して解決にあたる。また、界面活性剤の皮膚表面組織への吸着と皮膚バリア機能への影響の相関に関する報告は例がないため、生物化学領域で用いられるEIA法等を参考に実験・評価技術を確立し、界面活性剤の皮膚バリア機能に及ぼす影響に関する新たな知見を獲得することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
TI値を測定するための皮膚透過実験を実施するために、従来のフランツ型拡散セルを高精度な新型に更新する予定であったが、新型装置の原理は同じであるものの構造が大きく異なるため、技術習得や結果同等性の検証に要する時間と手間による研究の停滞を考慮すると合理的ではないと考え、機器の更新を見送った。その代わりに、関連する研究を行なっている研究者と連携し、関連研究者の所属機関(大阪松蔭女子大学)との連携研究を強化するための旅費とした。論文として報告できる研究成果が当初予想よりも増えたため、論文投稿・出版関連費用として次年度に使用する。
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