研究課題/領域番号 |
19K14016
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
佐藤 海帆 日本女子大学, 家政学部, 助教 (50825255)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 生活経営 / 協働モデル / エンパワメント / 福島原発事故 / 子ども / 生活資源コントロール / エンパワメント / 生活保障 |
研究実績の概要 |
本研究は、人間生活を、家庭と社会の関わりから探求する家政学の視点から、災害に強い生活協働モデルを構築することを目的としている。特に、福島原発事故後の幼児の遊び環境回復に着目し、生活と社会をつなぐうえで必要なエンパワメントの可能性を探ることからアプローチする。 2020年度は、福島県いわき市の幼稚園や保育園に通わせている保護者約3,800名(回収率60.5%)を対象にアンケート調査を実施し、結果を分析することができた。 具体的な内容については、放射線への心配、屋内外の遊び環境の状況(時間・場所など)、子育てへの負担、遊び環境への満足度・ニーズ、遊び環境づくりの意識、生活意識などである。 その結果、第1に、放射線について心配と回答している保護者の割合は2割弱と徐々に減少しているが、震災から9年半経過しても放射線への懸念は続いていること、第2に、保護者の約1割は、放射線の心配により、子どもの遊びは制限されており、特に屋外遊び時間の増加および海や山など自然の中での遊びへのニーズが高いこと、第3に、遊びの制限が、子育てへの負担に影響しているため、特に生活への不安を抱く子育て家庭への対応を継続的に行うことが必要であること、第4に、屋内遊び場の利用により、「子育てをしていて、ほっと一息つく時間をもてるようになった」(47%)、さらに保養の参加により、「子育ての心理的負担が減り、安心感を感じることが多くなった」(42%)、「自分たちが参加する保養プログラムは、自分たちも一緒によくしていこうと思った」(17%)などの生活への変化が生じていることが明らかになった。 それにより、時間の経過に合わせて、子育て家庭に寄り添った遊び環境をめぐる社会的支援を考察するための重要な手がかりを得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は、福島県いわき市の幼稚園や保育園に通わせている保護者へのアンケート調査を約2,000名を対象に行う予定であったが、想定よりも多い約3,800名(回収率60.5%)からの調査協力が得られ、対象を拡大して調査を実施し、結果を分析することができた。 さらに、当初2021年度に予定していた、屋内遊び場を利用している保護者への面接調査についても、計画を繰り上げて調査の準備を進めることができた。 以上のように、当初の計画以上に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで当初の計画以上に進展していたため、2021年度も引き続き計画を遂行する。 2021年度は、屋内遊び場とリフレッシュキャンプを利用している保護者約1,000名を対象にアンケート調査・複数名への面接調査を行い、より良い遊び環境(生活資源)を生活に取り入れられる(られない)保護者の特性と、エンパワメントの効果を把握する。 具体的には、保護者の遊び環境へのニーズ、エンパワメントや生活資源コントロールの要因(きっかけ、考え方、置かれた環境)・プロセス、遊び環境づくりへの参加のきっかけ、遊び場利用による生活への影響について、詳細に把握する。 なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況を鑑み、必要に応じて調査方法の変更を検討する。 これにより、生活当事者のニーズに合わせた社会的環境づくりが実現されるために、生活と社会をつなぐ役割としてのエンパワメントあるべき方向を導く手がかりを探る。
|