多忙な現代社会における食習慣の乱れは、睡眠の不調を招き、腸内環境を乱す。腸内環境の構成要素である腸内細菌叢の組成は食習慣によって変化するが、この腸内細菌叢の変動が脳機能に影響をもたらすことが明らかになっている。これまでの研究で、抗生物質の慢性投与によって腸内細菌叢を変動させると睡眠覚醒構造に影響が生じることを明らかにしてきた。本年度は腸内細菌叢の組成と腸管内代謝物質に着目し、腸内環境が睡眠覚醒構造に及ぼす影響を明らかにすることを目指した。まず、昨年度睡眠解析を行ったネオマイシン慢性投与マウスの盲腸内容物について解析を行ったところ、抗生物質非投与群と比較して腸内細菌叢の組成が大きく変化しており、特定の細菌群が約40%を占めていることを明らかにした。続いて、腸内細菌によって産生される腸管内代謝物質のひとつであるエクオールに着目し、エクオールが睡眠覚醒構造に及ぼす影響について明らかにするための実験を行った。エクオールは経口で投与し、投与90分後後の血中濃度が非投与群と比較して有意に上昇することを確認している。睡眠期である明期の開始1時間前にエクオールを経口投与し、明期開始から48時間の脳波・筋電図を計測して睡眠解析構造を解析した。続いて、睡眠阻害におけるエクオールの作用を明らかにするために、明期開始1時間前にエクオールを経口投与し、明期開始から6時間の睡眠阻害を行った後48時間の脳波・筋電図を計測して睡眠解析構造を解析し、エクオールが睡眠に及ぼす影響を明らかにした。
|