免疫機能は加齢により特徴的な変化を示す(獲得免疫機能の低下、自己抗原に対する反応性および炎症素因の増大等)。この中でも特に炎症素因の増大は感染症やがん等の高齢期に増加する疾患の発症や病態形成に影響する。 胎生期~生後早期までの栄養環境が出生子の健康や疾患のかかりやすさに影響することが報告されているが、そのメカニズムについては不明な点が多い。本研究では、胎生期~離乳期の栄養環境が出生仔マウスに及ぼす影響について、特に母マウスの高脂肪食摂取による食餌誘導性肥満の影響が、仔マウスの若齢期から老齢期にかけてどのように進展するかについて、仔マウスの免疫・代謝機能に及ぼす影響に着目して解析を行っている。 本年度は、仔マウスの炎症病態への影響を評価する方法を確立することを目的に、チオグリコール酸培地Ⅱ(変法チオグリコール酸培地)の腹腔内投与により実験的非感染性腹膜炎を誘導し、投与1日~4日後の炎症・抗炎症指標の変化を経時的に観察した。腹腔滲出マクロファージと脾臓細胞の炎症性/抗炎症性サイトカインの分泌能を中心に評価を行い、炎症誘導後の各指標の動態を確認することができた。 今後は、本年に得た基礎データをもとに、高脂肪食を摂取させた母マウスから生まれた仔マウスの非感染性炎症に対する炎症応答の評価を進める。さらにヘルパーT細胞機能が受ける影響も検討項目に加え、免疫関連疾患発症への影響についても検討し、本研究の目的を達成するために研究を進める計画である。
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