研究課題/領域番号 |
19K14049
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
廣瀬 公彦 北海道大学, 大学文書館, 特任助教 (70828425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 入学者選抜試験 / 大学予科 / 帝国大学 |
研究実績の概要 |
2019年度は、東北帝国大学農科大学の期間(1907~1917年)における帝国大学付属大学予科の入学者選抜試験の位置づけを研究課題とし、他の教育機関との比較検討の前段階として、東北帝国大学農科大学大学予科の入学者選抜試験の制度と実施内容に関する論文を発表した。 大学の規程、『官報』、教務部作成文書(北海道大学大学文書館所蔵「帝国大学期簿書」および東北大学史料館所蔵「教務書類」)、受験雑誌等を調査し、東北帝国大学農科大学大学予科の志願者資格、試験日程、科目、場所、志願者数・入学者数等をとりまとめて分析した。 同校の規程では中学校卒業者と専検合格者に順位を設けず志願者資格を与えていたが、調査した範囲では若干名の専検合格者や留学生を除き、志願者は中学校卒業者であった。1911年には、学則改正により高等学校の「無試験検定規程」(1910年4月14日付、文部省令第11号)が適用されることとなったが、適用を稟請した際の手続きを文書により辿ることができた。試験の場所は、札幌と東京から選択する形式であり、資料で確認できた志願者のうち9割が東京を選択していた。その他、1911~1914年では合否基準の一部が判明した。 また、「帝国大学期簿書」所収の入学願書綴を調査し、『官報』彙報欄に掲載されない入学許可取消や補欠合格の人数を確かめることができた。 上記の研究は、これまで制度の上で高等学校と同一とされてきた帝国大学付属大学予科について、入学者選抜試験の実際をより具体的に比較検討する際の基礎資料となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、「帝国大学期簿書」(北海道大学大学文書館所蔵)を悉皆的に調査し、東北帝国大学農科大学大学予科(1907~1917年)の入学者選抜試験の制度と実際を分析した。また、旧制高等学校に関わる資料の所蔵機関を2ヶ年で調査する計画のうち、国立国会図書館、東京大学駒場博物館、東北大学史料館、名古屋大学大学文書資料室、東京都立図書館中央図書館、大倉精神文化研究所附属図書館における資料調査を実施した。 上記の調査に基づき、論文「東北帝国大学農科大学大学予科の入学者選抜試験」(『北海道大学大学文書館年報』第15号、2020年3月発行)を発表した。これは、高等教育機関への選抜試験の歴史の中に東北帝国大学農科大学大学予科を位置づける前段階となる。 以上より、本研究はおおむね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、1907~1917年の各旧制高等学校における選抜試験の実施状況について調査し、東北帝国大学農科大学大学予科と比較検討する。そのために、京都大学、金沢大学、熊本大学、岡山大学、鹿児島大学における資料調査を予定している。ただし、新型コロナウイルス感染症対策による臨時休館等により、当面の間は前記の機関の利用が見込めないため、図書等の刊行物やインターネット公開しているデジタルアーカイブを主な対象として、試験日程、科目、場所、志願者数・入学者数等を調査する。 また、2021年度実施予定であった「札幌農学校簿書」(北海道大学大学文書館所蔵)の悉皆的な調査を、前倒しして2020年度から開始し、前史として1876~1906年における札幌農学校予科(予修科)の選抜試験の分析を進める。
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