2021年度は、東北帝国大学農科大学大学予科(1907年~1917年)の入学者選抜試験制度について高等学校との比較検討することを研究課題として、高等学校選抜試験の実施内容について決議をおこなった高等学校長会議に関する論文を発表した。 「高等学校長会議決議」(熊本大学五高記念館所蔵)、「退職者履歴資料」(北海道大学大学文書館所蔵)、『文部省年報』、新聞・雑誌記事を調査し、高等学校長会議の開催期間、諮問事項と決議事項、東北帝国大学農科大学大学予科の参加状況についてとりまとめた。 高等学校長会議は文部省が毎年4月~5月に招集した。東北帝国大学農科大学は、1908年は宮部金吾(農科大学教授)、1909年~1911年は溝淵進馬(予科教授、予科主任)、1912年~1917年は渡辺又次郎(予科教授、予科主任)が出席し、1908年以降毎年の高等学校長会議に出席した。高等学校長会議では毎年度の決議事項の大部分を入学者選抜試験が占め、会議の主要な議題であった。高等学校の選抜規程、募集要項、『官報』に掲載する「学生募集」記事についての決議をおこなった。あわせて、1909年・1910年は東北帝国大学農科大学および第七高等学校造士館、1911年~1916年は東北帝国大学農科大学大学予科の選抜試験を他の高等学校に先んじて実施する旨の決議があることを確かめた。 上記の研究は、東北帝国大学農科大学大学予科の入学者選抜試験の実施が高等学校の選抜試験との関わりを有することを明らかにし、両者を比較検討する際の前提をなすものである。
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