本研究は、イギリス(イングランド)の中等学校段階における排除のリスクが高い生徒を対象に、職業・キャリア教育およびキャリア・ガイダンスを通じた学校内外の移行支援について、政策背景および制度的枠組みと課題を明らかにし、学校主導のキャリア教育・キャリア支援の専門性のあり方について検討することを目的とした。 元労働党政権(1997~2010年)が行ってきたキャリア教育・ガイダンスに関する学校内外の学習や支援については国内外から高い評価を受けていた。特に、重点的にリソースを割り当ててきたのは支援の必要な生徒や離脱(exclusion)のリスクの大きい生徒であり、情報・アドバイス・ガイダンス(IAG)は社会的排除の積極的防止策として優先順位の高い政策として位置づけられた。しかし、イギリスでは2012年に行われた中等教育段階におけるキャリア教育・ガイダンス改革(以下、2012年改正)により、学校におけるキャリア教育やキャリア支援のあり方が大きく変わることとなった。 最終年度は、メインストリームの学校から弾かれる児童生徒の様相をデータを用いて考察し、社会的養護(Looked After Children:LAC)の学習と支援について地域と学校を基盤としたアクターの関わりを明らかにし、その課題を示した。 これまでの成果として、イギリスの2012年カリキュラム改正により大きく変容したキャリア教育・ガイダンス提供における学校内外のパートナーシップ体制の課題を明らかにした。また、排除のリスクの高い生徒がメインストリームの学校外に多く存在していることから、オルタナティブ学習機関におけるキャリア支援および学習の様相を調査し、支援体制の枠組みと課題を検討した。また、メインストリームの学校から排除(停学・退学)する子どもたちの状況を調査し、特にLAC生徒の学習支援について、その課題を示した。
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