研究課題/領域番号 |
19K14060
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
芥川 祐征 岐阜大学, 教育学研究科, 助教 (80757542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 校長講習 / 校長免許状 / 校長養成 / 現職研修 / 免許法認定講習 / 公開講座 / 戦後教育改革 / 地方教育史 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本で校長養成が制度化されていた戦後初期(1949年~1954年)に焦点を当て,全国各地に点在する郷土史料の分析を通して,都道府県教育委員会の主催する校長講習の実態と成果・課題を解明することを目的としている。特に,各都道府県における校長講習の組織体制(system)および内容(contents)について,①校長講習のカリキュラムと質保証のための諸条件整備,②校長講習受講者の単位認定・免許状取得状況とその後の校長登用人事を解明するものである。本年度は研究計画の1年目(全3年)に当たり,次の2つ(全5つ)の研究課題を遂行した。 第一に,校長講習のカリキュラムと単位認定方式の解明である。このことについて,各都道府県の校長講習カリキュラム(科目・内容・教材・方法等)を明らかにするために,『教育委員会時報』『教育要覧』『教育広報』等の地方史料を蒐集した。また,講習の受講科目と校長免許状取得のための単位認定との対応関係を明らかにするために,各自治体の教育職員免許法施行細則を蒐集した。この過程において,校長講習の運営方式や校長免許状取得のための単位認定方式も都道府県ごとに異なることが明らかになった。 第二に,各都道府県における校長免許状取得者の人事状況の解明である。このことについて,各都道府県の校長人事について,校長講習の受講者の登用傾向を明らかにするために,文部省調査局統計課『学校教員調査報告書』『学校教員需給調査報告書』等の史料を蒐集した。また,校長免許状の等級別(一級・二級・仮)の登用状況を解明するために,各自治体の『調査統計年報』『学校一覧』等の史料を蒐集した。この過程において,当時の校長職については二級・仮免許状の取得者が主を占めており,長期休暇における免許法認定講習・公開講座・通信教育を利用して単位を取得していたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究課題を遂行するにあたって,都道府県の教育委員会関係資料(郷土史料)を蒐集した。特に,地方史料については全国各地に点在しており,従来の研究では分析されてこなかった。しかし,民間情報教育局(CIE)による教育改革が地方分権を本旨としており,実質的に地方軍政部教育担当課が各教育委員会における啓蒙活動(講習・講演・寄稿)を主導していたことに鑑みて,これらの史料の分析は欠かせない。本年度は,以下の公立図書館図書館において史料蒐集を完了した。 まず,都道府県レベルの取組みについては,北海道立・宮城県・福島県立・群馬県立・埼玉県立熊谷・千葉県立中央・東京都立中央・東京都立多摩・神奈川県立中央・新潟県立・富山県立・山梨県立・静岡県立中央・奈良県立・山口県立山口・香川県立・愛媛県立・鹿児島県立奄美の各都道府県立図書館を調査した。 しかし,この調査過程において,より小規模な自治体での取組み(校長の経営的知識・技能の取得および経営的能力の向上方策)が行われていた実態に気づいた。そこで,新たに市レベルの図書館も追加調査することにした。 すなわち,市レベルの取組みについては,弘前市立・盛岡市立・仙台市民・秋田市立中央・秋田市立土崎・福島市立・いわき総合・水戸市立中央・宇都宮市立中央・前橋市立・横浜市立中央・川崎市立中原・相模原市立中央・相模原市立橋本・新潟市立・甲府市立・長野市立南部・市立小諸・上田市立上田・松本市立中央・飯田市立上郷・岐阜市立・静岡市立中央・静岡市立清水中央・浜松市立中央・名古屋市立鶴舞中央・四日市市立・大津市立・京都市中央・京都市右京中央・大阪市立中央・堺市立中央・神戸市立中央・和歌山市民・岡山市立・下関市立中央・徳島市立・高松市中央・松山市立中央・高知市民の各市立図書館を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画については,校長講習の質保証のための講師の力量形成過程の解明,校長講習制度の成立当初における理念・目的の解明を行う予定である。すなわち,①教育学部教授講習に関する文書史料,文部省「教育長講習関係書類綴」(各大学文書館・史料館所蔵)の分析,②IFELを修了した講師の力量形成過程を解明するために『講習小史』『研究集録』『修了者名簿・受講者評価』(各大学文書館所蔵)の分析,③政策立案に関与した「森戸辰男関係文書」(広島大学文書館所蔵),「辻田力旧蔵資料」(国立教育政策研究所所蔵),「玖村敏雄文庫」(山口県立山口図書館所蔵)の分析である。 ところが,国内における新型コロナウイルス感染症の拡大にともない,令和2年4月に政府が緊急事態宣言を発表した。このことにより,日本国民に対しては不要不急の外出は自粛するよう要請されており,各大学においても出張の原則禁止等の対応に追われている。この動向については,現時点で終息の目処が立っていないことから,今後の史料蒐集については大幅な計画の変更に迫られる可能性がある。ただし,これまでの調査活動において,国立国会図書館憲政資料室,国立教育政策研究所教育図書室,文部省旧蔵教育政策コレクション(筑波大学所蔵)等の史料蒐集は完了している。 そこで,代替的な措置として,以下の計画を考えている。すなわち,①米国側の校長養成制度理念に関する『第一次米国教育使節団報告書』「CIE Records」等の分析,②日本側の校長養成制度理念に関する『日本側教育家委員会報告書』『教育刷新委員会・教育刷新審議会会議録』等の分析,③教育職員免許法の改正・廃止過程に関する『免許法改正資料』『免許法審議経過』『教員養成制度諸通達』の分析,④都道府県教職員組合による研究・研修活動に関する時報・年報等の分析である。
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