研究課題/領域番号 |
19K14061
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
和田 正法 三重大学, 教育推進・学生支援機構, 准教授 (10724990)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 工部大学校 / 技術教育 / 工業教育 |
研究実績の概要 |
本年度は、従来から計画にあった、2022年7月にパリで行われる国際会議The 19th World Economic History Congressにおいて、ドイツをはじめとする研究者からの招聘を受け(2021年度)、東アジアの人材育成と経済発展の歴史的アプローチに関するシンポジウムに参画し、その成果として国際誌で論文を発表するなど、研究を進展させることができた。すなわち、本申請の主題である工部大学校卒業生を中心として、明治期における日本人技術者の就職活動を分析することで、産業発展を起こすための技術者の教育に関する社会的・思想的な背景について解明した。工場労働者が働く現場では、伝統的な製造現場における労働環境が、学卒技術者が働くことのできる近代的な業務制度にとって代わる過渡期であったことを明らかにした。本研究では、従来の公式的記録に加えて、技術者たちが回想録で証言する就職や労働環境に関する記述を収集し、調査の対象とした。この一連の研究調査によって、江戸時代に生まれ育ち封建の感覚を背負っていた初期の技術者とは異なり、明治以降に生まれ育った人物には民間に対する感覚が生まれながら異なっていたとみられることを明らかにした。実際、工業化の初期には、企業にはエンジニアを雇用する余裕がなかったという実情があった一方で、産業の進展にともなって、被雇用者である学卒エンジニアの民間企業に対する意識が変化した。このように、従来の工部大学校に関する研究を、当時の社会経済の中に位置付けて明らかにすることができたことが本年度の成果である。一方で、時代をさかのぼる方向に研究を拡大しきれたとはいえず、今後の課題として残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの取り組みの成果を刊行した点で、大きな進展がみることができた。史料の収集を目的とした現地調査は当初の計画とは大きく異なっていることは確かであるが、技術者の回想録等、入手が可能な資料を得るという代替的手段で補うことができたと考えている。本申請に基づく研究が対象とする期間のうち、時代を下る側には大きな進展を見せたが、時代をさかのぼる方に進展できたとは言い難いものの、コロナ禍における制限を考慮すれば、この困難は想定の範囲内にあるのではなかろうか。また、補助事業期間の延長制度を利用することで、ある程度挽回できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の再延長を行うことで、これまでに展開できなかった本申請に基づく研究が対象とする期間のうち、時代をさかのぼる方への検討を行う。研究計画の進度にかかわらず、情報収集や国内外の研究者との意見交換は継続的に行う。対面での参加がかなり可能になってきたため、状況を注視しつつ出張を行うことを視野にいれつつ、研究会や会議へのリモートによる参加も引き続き利用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費用について、本年度中も、予定していていた出張の取り止め等により、計画通りに利用することができなかった。次年度は、出張に関する支出を行うとともに、資料の請求や購入、オンライン環境の整備といった使途にも継続的に振り分ける。
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