研究課題/領域番号 |
19K14062
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
徳永 俊太 京都教育大学, 大学院連合教職実践研究科, 准教授 (10582265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 市民性教育 / イタリア / 学校 / 地域社会 |
研究実績の概要 |
2020年度は、COVID-19の影響により、予定していた現地でのフィールドワークを行うことができなかったため、オンラインでの資料収集などをもとにして文献研究を行い、その成果を論文にまとめた。これは、市民性教育における重要な学習として近年イタリアで取り上げられている「記憶」の学習について分析したものである。「記憶」とは、各個人が持つものではなく、学習内容としてカリキュラムに規定されうるものである。この「記憶」の学習では経験や情意が強調されており、理性を重視して発展してきたイタリアの歴史教育研究とはやや相容れないように見えるものである。 この「記憶」の学習について、イタリアの先行研究を参考にして、歴史的変遷を追った結果、かなり古い時期からイタリアの歴史教育において問題意識として存在していたことが明らかになった。歴史学は「記憶」を批判的に検討する装置としての役割を与えられている。さらに、ファシズムやレジスタンス運動などのイタリア固有の社会的文脈が、「記憶」の学習を媒介する形で、イタリアの歴史教育に大きな影響を与えていることも明らかになった。 この研究成果をまとめた論文を2020年3月発刊予定の学会誌(査読あり)に投稿をしたが、結果は分析が粗いということで不採択であった。そこで、2021年6月に開催(オンライン)される日本カリキュラム学会の自由研究発表で、分析の根本的な見直しを行い、その成果を発表する。発表でもらった意見をもとに論文を執筆し、2021年9月末締め切りの日本カリキュラム学会の学会誌『カリキュラム研究』(査読あり)に投稿をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の影響により、この研究のための手法として想定していた現地イタリアでのフィールドワークが実施不可能になったため、2020年度は文献研究にシフトせざるを得なくなった。カリキュラムの理念などは文献研究によって押さえられるものの、分析対象として想定していた実践や子どもの変容に関してはデータを取ることができていない。よって本研究は「遅れている」と判断できる。 さらに付け加えると、COVID-19の影響を受けて、イタリアではこれまでの社会のあり方が見直されている。その結果として、イタリアが想定している市民性も変化していると考えられるが、この点を十分に検討できていない。イタリアが想定している市民性はこの研究の基礎になるために、検討は不可欠である。このことも「遅れている」と判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
文献研究を進める上で必要となる文献をある程度確保することができたので、COVID-19の影響があるうちは、文献研究を中心に研究を進めることとする。2020年度で主に取り組んだ「記憶」の学習に関する問題は重要なテーマであると考え、2021年度も引き続き研究を行う。渡航に問題がなくなったと判断できるようになれば、現地の研究協力者と連絡を取り、早急に現地でのフィールドワークを行うこととする。 現在の日本、イタリアの感染状況を鑑みると、2021年度中に研究を完結させることは難しいと考えている。よって、延長申請を行い、2022年度中での研究の完結を目指すこととする。 ただし、2022年度も引き続き現地でのフィールドワークが難しくなることも考えられる。そこで、2021年度は、現地の研究協力者と連携し、オンラインでのアンケート調査や研究交流を前提した研究計画を作成し、渡航が難しくなった場合も研究の進捗に影響がでないようにしておく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、2019年度に続き2020年度も現地でのフィールドワークのための旅費を計上することがなかったため、次年度使用額が生じている。
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