2023年度は、コロナの状況が落ち着いたこともあり、2019年度から2022年度までは実施できていなかったイタリアでのフィールドワークを11月と3月に実施することができた。フィールドワーク先では、学校訪問、授業見学などを行い、当初の研究計画においては、経年的な調査を実施する予定であったものの、上記の事情により、こうした調査は難しかった。研究はこの2回のフィールドワークと文献研究を用いて行った。 2023年度の研究は、研究テーマとしている市民性とSDGsの関係に焦点を当てて行い、SDGsの理念がイタリア共和国憲法の理念として読み替えられることで市民性の概念に取り込まれたことを明らかにした。研究成果は、2023年11月に行われた教育目標・評価学会第34回全国大会において発表した。その後のイタリアでのフィールドワークを踏まえて、京都教育大学紀要(2024年9月刊行予定)に論文を投稿した。 本研究を開始した2019年度に、イタリアでは市民教育科という新たな教科が設置され、市民性に関する学習はこの教科を中心に行われるようになった。それに伴って、研究期間全体でも、この教科の特性や実践に着目して研究を進めることになった。上述したようにSDGsなどの国際的な理念を取り込んでいることが大きな特徴であることが明らかになった。一方で、2023年度に行ったフィールドワークで明らかになったのは、それぞれの学校や教育機関がそれぞれの実践を行っており、市民教育科の共通認識はまだ不十分であることである。このことは、今後の研究課題である。
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