研究課題/領域番号 |
19K14065
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研究機関 | 福岡県立大学 |
研究代表者 |
董 秋艶 福岡県立大学, 人間社会学部, 講師 (50780087)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 清末中国の女子教育 / 下田歌子 / 新選家政学 |
研究実績の概要 |
申請者の課題関心は、日清戦争後の中国における日本女子教育情報の経路である。本研究では、日清戦争後、中国語に翻訳された『新選家政学』(原作下田歌子 1901年)に着目し、その女子教育情報がいかにして中国へもたらされ、中国はその情報をどのように受容したのか、すなわち、その経路に交わる「ヒト」「モノ」の動きを明らかにすることである。それらの作業を通して、日中の女子教育に対する相互認識を浮き彫りにし、当時の日中関係史の更なる解明を目指している。本年度の具体的な研究実績は以下の通りである。 第一に、本年度は初年度であり、計画通りに実践女子大学に所蔵してある下田歌子(以下 下田)に関する資・史料の収集を行った。所蔵された下田の書簡の中に、中国人女性であり、友人でもある銭単士釐(以下 単)への書簡という貴重な史料があった。なぜならば、単は最初に下田の『新選家政学』を翻訳した人物であったからである。また、実践女子大学にある下田歌子研究所の先生たちとの交流ができ、下田が中国人との交流に関する資・史料の所蔵が少なく、発掘することが今後の課題であることも共用された。第二に、東京都立図書館の実藤文庫にて資・史料の収集を行った。そこに所蔵されているマイクロフィルム版史・資料の中に、単の中国語翻訳書『家政学』があり、それを複写できた。第三に、インターネットを活用して、もう一人の『新選家政学』訳者である曽紀芬(以下 曽)に関する資料も入手した。 それらの史・資料を整理分析し、学会にて成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上記のように、実践女子大学での史・資料収集で、下田が単に送った書簡を入手し、東京都立図書館の実藤文庫にて銭単士釐が翻訳した『家政学』を複写した。加えて、ンターネットで曽に関する資・史料も入手したことで、本研究の分析視点に関する議論を深めることができた。それが成果の一部として学会で発表ができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は上記に述べたように、一部の成果を学会で発表を行った。部会の総合討論で関連する領域の会員との意見交換ができ、本研究の深まりへとつなぐ多くの示唆を得られた。また、計画書にも述べたように、清末中央政府は1904年公布した教育制度の際、外国の女子教育教科書として日本の女子教育者である下田の『家政学』ならば使用しでもよいと勧めた。そこで、2年目の研究計画としては、中国の受容、つまり、当時の中国政府が下田の『家政学』を教科書として進めた経緯を検討していく試みである。学制政策にかかわった人物の資・史料の収集をさらに展開するとともに、中国現地で下田に関する資・史料の発掘し、収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実践女子大学に所蔵している史・資料の中で、中国人女性単を通じて、当時中国の学制の策定に選ばれた湖広総督の張之洞(以下 張)に送った書簡もあった。単の夫が張によって日本へ派遣され、湖広地方政府が派遣された留学生の監督に任された。また、地方政府から来日した教務視察員へのものもあった。その教務視察員が当時中国の学制の策定に選ばれた湖広総督の張之洞より派遣されており、彼らに関する資・史料を、3月に日本の外務省外交史料館や東京都立図書館の実藤文庫等へ史料収集を予定していたが、新型コロナウイルス流行のため、実現できなかった。その予定を来年度に変更する予定。
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