研究課題/領域番号 |
19K14074
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
邊見 信 都留文科大学, 教養学部, 講師 (40830112)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 放送教育 / 国民学校 / ラジオ / 日本放送協会 / メディア / 教育史 / 総力戦体制 |
研究実績の概要 |
二年目にあたる2020年度は、国民学校向け教育放送の成立過程を分析するとともに、放送内容の整理を行った。 国民学校向けの放送内容については、1941年12月をはさんでその前後で、大きく異なることが指摘できる。大まかに整理するならば、事前の番組編成による放送を原則とし、各教科の教科書教材の理解に寄与することを最優先としたのものから、戦況によって番組編成を柔軟に変更し、「軍事講話」や「戦線地理」、「共栄圏講座」といった教科書に依拠しない内容の比重を大きくしたものへといった変化である。 事前の番組編成を基本とした時期においては、学校向けテキストの発行により、放送教育を実施しようとする教師たちに放送内容・放送時間を事前に周知することが可能であった。放送内容・時間を把握することにより、教師たちは聴取前・聴取中・聴取後の三つの段階を基本とした聴取指導の計画をたてたうえで、放送を利用することができた。ここでの聴取指導の主眼は、聴取を最も効果的に、児童に正確に内容を把握させることである。 しかしながら、戦況によって番組編成が柔軟に変更されるようになった時期においては、教師や子どもたちが事前に放送内容・時間を把握すること、計画立てられた聴取指導を実施することは困難になっていった。こうした放送内容の変化に伴う国民学校における聴取指導の変化については、2021年度に予定している放送教育の実践記録の分析のなかで、さらに考察を深めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度前半は、資料調査先である図書館や各博物館が感染症対策で閉館していたため、資料の調査・閲覧が困難であった。そのため、国民学校放送における番組内容の整理、分析に遅れが出ている。 ただ、この遅れは、「聴く習慣」の国民学校における形成過程を実践記録から分析しようとする2021年度の研究計画のなかで、十分に取りもどせると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
三年目にあたる2021年度は、放送教育の実践記録を分析することで、「聴く習慣」の国民学校における形成過程を明らかにする。国民学校においてはどのような放送の「聴き方」が求められたのか、規範的な「聴き方」が選びとられていく過程とその訓練の様相を解明する。 また、2019~2020年度とあわせて本研究の成果をまとめ、論文あるいは報告書として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、宿泊をともなう資料調査・学会報告の実施は困難であり、次年度使用額が生じた。 2021年度は、引き続き物品費として戦前期メディア研究関連図書、教育学・歴史学関連図書や、トナー・コピー用紙、文房具類を購入する。
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