研究課題/領域番号 |
19K14074
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研究機関 | 都留文科大学 |
研究代表者 |
邊見 信 都留文科大学, 教養学部, 講師 (40830112)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放送教育 / ラジオ / 国民学校 / 日本放送協会 / 教育 / メディア |
研究実績の概要 |
三年目にあたる2021年度は、日本放送協会の機関誌などを中心に、国民学校における放送教育の実践記録を収集・分析した。日本放送協会関係者の放送教育論が実践として具体化されていく過程を分析することによって、「聴取訓練」がただ聴取という行為のみに限定されるのではなく、聴取時の心構え・態度、あるいは放送内容を反映するような聴取後の生活様式の変化までをも含み込む議論であったことが明らかになった。 総力戦体制下におけるラジオ放送の学校への導入を、教育方法の変革としてのみ分析するのではなく、ラジオの聴取それ自体が教育目的であり教育課題であったことに注目する本研究においては、国民学校における放送の聴取訓練が、聴取に限定されない子どもたちの生活の変革をも含み込む広い概念であったことの解明は重要な発見である。このことは、現在のメディアリテラシー、情報リテラシー教育を批判的に検討する視点にもなると考える。 また、1年目の2019年度に収集した資料『JOBKニュース』を活用して、学校教育放送に先行して試みられ、団体聴取という聴取形態が構想されるきっかけでもあった1930年代前半の農村青年向け教養放送について、放送に寄せられた農村青年の感激の声を手がかりにして彼らの生活文脈とラジオによる教育体験とがいかに接合したのかという視角から研究をまとめている(公益財団法人野間教育研究所70周年記念調査研究論文社会教育部門「戦前期教養放送と農村青年の教育 -ラジオ番組「農村への講座」の団体聴取運動」として近刊予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実践記録の収集・分析においては、国民学校において放送教育をめぐる議論が活発化していったことが分かった一方で、国民学校期という時代状況と全国に放送教育を広めたかった当時の関係者の意図のためか、授業の展開や方法が形式化し、学校間の差異や特徴は判然としない。そのため、社会教育における放送教育と比較しながら、国民学校における「少国民」向けの放送教育の特徴を析出していく必要が浮かび上がってきた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「戦前期教養放送と農村青年の教育 -ラジオ番組「農村への講座」の団体聴取運動」(野間教育研究所70周年記念調査研究論文)の執筆を経て、1930年代前半から開始された農村青年向け教養放送と、1930年代半ばから開始された学校向け教養放送とを比較することによって、本研究の課題である国民学校期における放送教育の構想と展開の解明についても新たな視角を得ることができるのではないかと考えた。放送内容、理想とされた聴取態度、聴取空間、聴取条件などの点で社会教育におけるラジオ聴取と比較することによって、国民学校における「少国民」のラジオ聴取訓練がいかなる特徴をもっていたのかを、2022年度の研究のなかで明らかにしていく。 2022年度は本研究の最終年度にあたるため、これまでの成果をまとめ、論文あるいは報告書として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、宿泊をともなう資料調査・学会発表の実施が引きつづき困難であり、次年度使用額が生じた。 2022年度は、引き続き物品費として戦前期メディア研究関連図書、教育学関係図書、トナー・コピー用紙、文具類を購入する。
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