研究課題/領域番号 |
19K14078
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
西野 倫世 大阪産業大学, 全学教育機構, 講師 (20823983)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | teacher effectiveness / Value-Added Assessment / 学力テスト結果 / 教員の処遇 / 米国 |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究実績は,以下の通りである。なお,同年度は新型コロナウイルスの影響で渡航調査が実施できなかったため,当初予定していた研究計画から変更が生じている。
■論文発表1報■これまでに実施した渡米調査の成果をまとめ,全国学会の学術雑誌(招待論文)で発表した。具体的には,米国ワシントンD.C.の教員評価制度における学力テスト結果の利活用動向について検討を行った。政策レベルでは教師の効果(teacher effectiveness)を学力テスト結果(Value-Addedモデル等)から判断することが推奨され,処遇反映型教員評価の指標に採用する動きが進んできた一方,学校現場ではその運用が進むにつれて,評価結果の信頼性やテスト変更に伴う混乱,業務負担の増大等が問題視されている点を明らかにした。この作業から予備的考察に止まっていた学力データを扱うことの難しさについて示唆を得たため,本研究に接続する基盤となった。 ■学会報告1回■全国学会の委員会活動の一環として,教育経営と学校改善に関する国際比較研究(米・英・豪・NZ・日本)を行い,本研究に関わる内容についても同学会が主催する大会で報告した。その中で,米国におけるテスト結果公表の有無や利活用状況等を明らかにするとともに,本研究の対象国である日・米・英について,学校裁量や教職員の育成・研修システム等を比較・検討する機会を得た。 ■書籍発表1報■教育制度に関するテキストを執筆する中で,わが国の教育課程に関する歴史や関連法規について整理し,間接的にではあるが本研究と関連する教員の処遇(法令上の位置や役割)について知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究計画は,①渡航調査,②文献調査の充実・発展の2本柱としていた。 前者については,「研究実績の概要」の冒頭で記したように,令和2年度は新型ウイルスの影響で渡航調査が実施できず,当初の計画通りには進まなかった。 後者については,文献調査や論文執筆に多く時間を割き,現状分析を進めることができた。具体的には,米国で教員処遇政策がいかに進められてきたかについて,学力テスト結果の活用に焦点を絞った検討を行い,特質や問題点を整理・解明した。なお,この成果の一部を全国学会の学術雑誌において発表するとともに,その他の成果についても別稿でまとめている最中である。 以上から,進捗状況として上記区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の研究の推進方策としては,主に次の2点に注力する予定である。 第一に,政策形成過程面の分析に重点を置き,これまでの調査で生じた課題に応じて文献調査を充実・発展させる。具体的には,米国・日本(大阪市)ではいかなる推進要因と理論に基づいて,学力テスト結果が教員処遇の決定要因とされたのか,英国では学力テスト結果を教員処遇に反映しない方針に至る過程で,どのような議論が重ねられたのかについて整理・検討を行う。 第二に,新型ウイルスの問題で渡航自体が難しいことが予想されるが,状況が許せば渡米調査を行う。これまでの調査で既に関係を構築した教育委員会事務局,学校関係者,研究者に聞き取り調査を行うとともに,資料提供や政策関係者の紹介を依頼する。 なお,上記作業と並行し,次年度の英国での調査を円滑に進めるため,状況が許せば英国の教育関連学会に参加し,資料収集と関係構築に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
「研究実績の概要」の冒頭で記したように,例年最も大きな支出を占める渡航調査を当該年度に実施できなかったため,次年度使用額が大きくなった。新型ウイルスの影響が続いていることから,次年度も渡航調査の実施が危ぶまれる状況ではあるが,渡航が可能になり次第米国や英国に赴き,関係者へのインタビュー調査や資料収集,研究を推進する上で必要な研究ネットワークの構築などを行いたい。
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