研究課題/領域番号 |
19K14100
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研究機関 | 長野県立大学 |
研究代表者 |
寺川 直樹 長野県立大学, 健康発達学部, 助教 (50801990)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 〈人間性‐個性〉関係 / 対立の一致 / ヘルダー / 多文化共生 / 〈普遍‐特殊〉関係 |
研究実績の概要 |
今年度は、ヘルダーの人間形成論を手がかりとして、「普遍的なもの」たる人間性と「特殊なもの」たる個性との関係について考察した。 価値の多様化・相対化が進展する今日、多文化共生の実現が喫緊の課題となっているが、その多文化「共生」を可能ならしめるものとは何か。その点を明らかにするべく、多文化共生論の先駆者と目されているヘルダーの人間形成論を手がかりに、人間性と個性との関係およびその基盤となる〈普遍‐特殊〉関係を考察することで、多文化共生実現に向けた一視座を提供することを目指した。 まずは、〈普遍‐特殊〉の「対立の一致」関係をヘルダーの認識論・存在論の視点から考察し、その内容をふまえて、彼の歴史哲学をもとに「普遍的なもの」たる人間性と「特殊なもの」たる個性との関係について検討した。その内容を要約すると、「特殊なもの」すなわち個性的存在たる個々人および諸民族は、「普遍的なもの」たる人間性が歴史的風土的影響を受けて変化することでその存在を獲得するのだが、彼らは常にその原型である「普遍的なもの」たる人間性を有することから、〈人間性‐個性〉という対立が一致(均衡)した存在として生きているのである。 このように、ヘルダーの思想を手がかりとするならば、多文化共生を実現するためには個性的な多文化に通底する「普遍的なもの」、すなわち人間性がその前提となっている。そしてその際肝要なのは、多文化共生の実現に向けて「普遍的なもの」たる人間性のうちに「特殊なもの」たる個性を、そして個性のうちに人間性を見いだすこと、すなわち人間性とは何かと問い、それを育む人間性形成、より正確に言えば「対立の一致(均衡)」関係にある〈人間性‐個性〉の動態的認識過程なのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに進んでいるので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究内容をふまえ、次年度は〈人間性‐個性〉の「対立の一致(均衡)」関係に関する動態的認識および他者理解の原理となる、感情移入および共感の概念をヘルダーの人間形成論をもとに考察していく。
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