研究課題/領域番号 |
19K14101
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
上山 瑠津子 福山市立大学, 教育学部, 講師 (10804445)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 保育者 / 子ども理解 / メンタルモデル / 認知カウンセリング |
研究実績の概要 |
2020年度は,保育経験年数5年以内の幼稚園教諭を対象に行った個別面接のデータを分析し,論文投稿を行った。具体的な成果は以下の通りである。
個別面接では,認知カウンセリングの手法を援用した実践支援を行い,その有効性を3つの観点から検討した。第1に,対象児への理解について,「図式的説明」段階で作成された付箋図を分析対象として,カテゴリーごとに計数し量的に変化を捉えた。その結果,ベースラインより1回目以降の言及数が全参加者で増加しており,子ども理解を可視化する実践支援は,特に3回目までは視点の増加に有効であることが示された。第2に,実践支援の作用について,「診断的質問」「教訓帰納」の発話を中心に,定性的コーディングによる分析を行った。その結果,保育者自身の理解への作用では,13のオープンコードと5つの焦点的コードが生成された。付箋図を量的に把握したことで【対象児認識度への気づき】【理解の偏りへの気づき】【関わりや保育への気づき】につながり,付箋図の状態について質的な把握をしたことで【視点の状態への気づき】につながることが示された。さらに量的,質的な把握は【捉え方の気づき】といった保育者自身の理解の傾向や特徴へのメタ的な気づきにつながることが示された。また,子ども理解の枠組みの活用では,8つのオープンコードと3つの焦点的コードが生成された。理解の枠組みは,保育全体における子ども理解や記録に活用されることが示された。第3に,実践支援の有効性では,省察尺度,指導方法尺度,保育者効力感尺度を用い,初回と最終回の各尺度の得点を確認した。その結果,個人差があるものの,1回目より5回目でおおむね得点は高くなっており,本研究の実践支援は,省察や子どもへの関わりの向上に一定の有効性があることが示唆された。(日本保育学会第72回大会発表,保育学研究第59巻に掲載予定)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に収集したデータの分析を行い,本研究成果の一部として学会発表と学会誌への掲載とすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1.認知カウンセリングの手法を援用した実践支援の手続きについて,園内研修やカンファレンスでの応用を視野に入れ,手続きの改善点を整理する。 2.調査対象者の人数,経験年数,勤務園種別を広げて,今後の調査計画を立案する。 3.これまでに収集した子ども理解と保育実践の関連に関するデータを再分析し,論文投稿をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備調査の結果を順調に成果発表することができたが,一部データの投稿が残されている。2021年度は,国際誌への投稿を予定しているため英文校閲の費用がかかる。また,予備調査の手続きの改善を検討し,追加調査を予定しているため繰り越し計上した。
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