本研究は、19世紀中葉から20世紀初頭のアメリカにおいて、それまでカレッジ教育の目的のひとつとして論じられてきた「ディシプリン」概念が、その後の研究大学にどのように組み込まれ、またそこにおいてどのように論じられたかを、伝統的カレッジでの文脈と比較する形で検討する。これにより、学士課程の学習成果の議論において学問的知識がどのように位置づいているのかを考察しようとするものである。結論として、アメリカの伝統的カレッジにおいて構築された知的陶冶という意味での「ディシプリン」という概念は、近代大学成立時に否定されることはなく、むしろ近代大学における教育・研究の基盤として形を変えつつも、その学士課程に引き継がれたとの結論を得た。 研究5年目(延長2年目)となった本年においては、昨年度に引き続いて日本国内で入手可能な史資料とこれまでの研究を基に、日・米・独の中等教育・高等教育の各課程及び中等教育と高等教育の接続の在り方についての比較と各課程の内容について、アメリカのリベラル・アーツ教育及びそこで用いられる「ディシプリン」概念を中心に検討を試みた。そのうえでこれまでの研究を総括し、書籍として刊行することを目標に、昨年度に引き続いて後半部のプロット作成、取りまとめの作業を行った。こうした研究成果は、2024(令和6)年2月に研究代表者が慶應義塾大学大学院社会学研究科に提出した学位論文にも反映された。 研究成果の刊行については、関連する学位論文の審査が完了してから行うため、2024(令和6)年後半以降となる予定である。
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