最終年度も、感染症の再拡大の影響を受けたが、予定していた国立国会図書館の憲政資料室におけるCI&E関連の資料収集のための調査を一回実施することができた。また、国立国会図書館のデジタル化資料送信サービスの活用や古本屋を活用した関連する先行研究や文献の収集、そして、これまで収集した資料の整理が研究活動の中心となった。 その研究成果は、日本教育学会第81回大会(広島大学)の一般研究発表において、「教育基本法論議における教育理念の思考枠組の検討―務台理作の三項図式を手がかりとして―」というテーマで報告を行った。そこでは、教育基本法を中心とする戦後日本の教育理念や教育理念を巡る議論がどのような思考枠組みに基づいて理解され、構想されてきたのかについて検討した。特に近年の先行研究において注目されている個人-国家-人類(世界)の相互媒介関係を前提とする三項図式の思考枠組を手がかりに実証的な検証を行うことで、戦後の教育理念が抱えてきた問題の所在を明らかにすることを試みた。発表内容については、発表時の指摘等を踏まえて研究論文として日本教育学会に投稿し掲載された。 また、2023年3月に開催された東北教育学会第79回大会(東北大学)の自由研究発表において、「務台理作における文化概念の検討」というテーマで発表を行った。そこでは、戦後教育理念における重要なキーワードの一つである「文化」という文言の意味内容に着目し、とりわけ旧教育基本法における教育理念の形成に深く関与した務台理作の文化概念の内容について、務台の著作類や講演録の検討を通して分析を行った。発表内容については、更に内容を充実させた上で、2023年度に他学会での発表及び研究論文としての投稿を予定している。
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