研究課題/領域番号 |
19K14105
|
研究機関 | ものつくり大学 |
研究代表者 |
戸田 都生男 ものつくり大学, 技能工芸学部, 教授 (30765293)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 空き家 / 木造住宅 / DIY / 木のものづくり / 教育 / 暗黙知 / 工夫 / 改築 |
研究実績の概要 |
本研究では,森林環境教育としての木のものづくり活動の経験が木造空き家の改修に及ぼす影響を把握し,その教育効果を明らかにすることを目的にしている。さらに木造空き家を活用することで,建築系学生等の日常生活でのDIY(Do It Yourself)を促進して環境配慮的なライフスタイルの実現への貢献を目指している。調査対象の一つである埼玉県戸田市の空き家は,木造蔵の小屋組みを活用した改築と大学の実習で制作した小屋を現地に移設・減築し,離れ家として学生主体で設計施工し分担作業を終えた。また,もう一軒の埼玉県加須市の空き家の古民家は,簡易な現況調査と計画案の提示まで実施した。地域差等も考慮して長野県飯山市の木造山荘も一例に加え,小規模な増改築の設計施工を完了した。これらのうち,埼玉県戸田市の空き家(木造蔵の改築と木造小屋の減築離れ家)と長野県飯山市の木造山荘増改築の経験(参与観察等)から下記の知見を得た。 ・協働作業では建築士・現場監督・職人・施主らと学生各々の目的の共有が不可欠であり,特にプロや施主は,単に学生をマンパワーによるコストダウンとみるのでなく,むしろコストアップで工期も長期化する前提で若者を現場で育成する理解が重要であること。 ・学生は学内の実習等で培った技術を生かし,施主の要望やプロの指導を謙虚に受け止める一方,常識に偏らない柔軟な発想も重視し,苦労や愛着を得る様子がみられた。 ・これらのことから従来の設計・施工の手順や方法に拘らないポジティブな工夫等,協働する価値の創出が考えられた。 ・職人の道具の代用や学生の情報検索能力,両者の柔軟な発想等による施工の工夫は,教科書にみられない暗黙知的な知恵や技能に相当すると推測された。立場や世代を超えた工夫の融合で多様な改修物件への対応力に貢献することが期待される。この成果の一部は,2022年度日本建築学会大会(北海道)で発表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
埼玉県戸田市の空き家の蔵改築・離れ家の移設減築および長野県飯山市の木造山荘増改築は完了し,昨年度までの比較二軒について感染症等活動制限下で,最低限だが遅れは概ね取り戻せた。 これらに加えて比較等の対象となる空き家の古民家物件の調査と改築計画や,木のものづくり教育(学内での木造系実習・学外地域での木のものづくり活動等)の観察,アンケート等調査・分析・考察が途中段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
空き家の古民家である埼玉県加須市の改築に向けた詳細調査と実施案を優先し,同程度の千葉県佐倉市の古民家の空き家も参考に,これらの設計施工でのDIY的な木のものづくりの工夫を主として研究論文のまとめを進める予定である。 また,学内での木造系実習や研究室での木のものづくりを活かした木質化プロジェクト,学外地域での木のものづくり活動等の成果も分析・考察を進めて,「木のものづくり教育を活かした木造空き家活用モデルの構築」に向けた成果として,今年度に古民家改築物件は設計・施工の途中段階としても概ね傾向等をまとめて学会や展示会等で成果を発表予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主たる改築現場の設計施工は概ね完了したが,追加調査・分析等の作業が残っている。主な理由は改築現場の工程・施主の都合や感染症による活動制限等の影響による。 使用額は主に分析の統計ソフト,事例視察・現場交通旅費等に支出を予定している。今後,これらの作業を進め,研究論文のまとめ・発表に備える。
|