研究課題/領域番号 |
19K14114
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研究機関 | 畿央大学 |
研究代表者 |
塩原 佳典 畿央大学, 教育学部, 准教授 (40769650)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域教育史 / 信濃国 / 高島藩 / 維新期学制改革 / 藩校 / 藩地域 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近世的な身分社会から近代的な市民社会への移行過程のなかで、学校教育制度の歴史的な位置と意味を捉え直すことにある。かかる問題認識のもと、長野県松本・諏訪地方を主たるフィールドとし、地域教育史研究を行う。 2019年度は、諏訪高島藩における維新期学制改革について再検証した。高島藩の学制改革を主に担ったのは、国学派藩士たちであった。彼らは、幕末維新期に勤王誘引の建言や「偽勅使」への参加などの形で先鋭化しており、藩地域から忌避される場面がみられた。一連の事実は、彼らによる学制改革が、全藩的な支持を獲得するには至らなかったことを推測させる。それだけに高島藩の学制改革は、国学的な理念を全面に押し出すには至らなかった。高島藩における維新期学制改革の過程からは、国学派が藩地域からの十全な支持を獲得できず傍流にとどまった地域における学制改革の姿が浮かび上がる。国学校は存続期間がわずか二年ほどであり、領内への就学勧奨に消極的な藩側の姿勢も相まって、人民教化の構想としてはほとんど実効性を伴わなかった。しかしかかる状況は一方で、領内の諸身分を統合するより普遍的な「説諭」の必要性を教学担当者に自覚させる契機ともなっていた。 以上の研究成果は、近世史サマーセミナーで報告するとともに、『日本教育史学会紀要』にて学術論文として公表した。 また、研究成果の取りまとめと同時並行で、諏訪市教育会所蔵文書の整理・保存作業にも取り組んだ。具体的には、小澤家文書約600点の目録のデジタル化を進め、これにもとづいて保存用封筒への封入を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会報告と論文発表の形で研究成果を公表することができた。この点では、順調に進展している。しかし一方で、史料整理作業については年度内に完了することができなかった。次年度には調査の実施回数を増やすなどし、作業を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
19年度は主に藩士層の動向に焦点を合わせてきた。これに対し20年度は、幕末維新期における領民層の教育状況について調査・検討を進める予定である。諏訪高島藩領における、手習塾の経営について、手習教育の広がり、手習師匠の担い手などの論点を検証したい。そのため、これまで対象としてきた藩政文書に加え、区有文書などの調査にも着手する。 また前年度より継続してきた諏訪教育会の整理作業については、封入および目録の電子化ともに早い段階で完了する予定である。
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