研究課題/領域番号 |
19K14115
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
植田 啓嗣 西九州大学, 健康福祉学部, 講師 (60757326)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | タイの教育 / 少数民族の教育保障 / 多文化共生 |
研究実績の概要 |
本研究は、タイの民族的マイノリティである山地民の教育保障と多文化共生教育の課題に関する研究である。本研究では、次の2つの研究課題に取り組む。①山地民への教育保障が進む中で、山地民の子どもたちがいかなる民族文化・アイデンティティを保持しているのか、またその要因について複数の事例の比較を通して明らかにすること。②山地民の子どもたちとタイ族の子どもたちが、お互いの存在(人権意識)や文化をいかに承認・理解しているのかについて明らかにすることである。 2019年度は、2つの研究課題のうち、「①山地民への教育保障が進む中で、山地民の子どもたちがいかなる民族文化・アイデンティティを保持しているのか」に関する調査を実施した。山地民の子どもたちが多く通う中等教育機関である仏教学校4校でフィールドワークを実施し、インタビュー調査やアンケート調査を通して実態把握に努めた。また、バンコク都やチェンマイ県で山地民教育に関する情報収集をした。 フィールドワーク先である仏教学校は、山地民(その他少数民族含む)の生徒が6割、タイ族の生徒が4割という構成である。仏教学校は僧侶養成を目的とした学校であるものの、僧侶の道に進む生徒は少なく、教育の機会を得ることが難しい生徒を対象に一般教育を実施している学校である。 仏教学校の山地民に対する調査の結果、山地民の生徒の父母は十分な教育機会を得られていない人が多いことがわかった。さらに、タイ族と比べて山地民は標準年齢より遅れて仏教学校へ入学する傾向があることがわかった。また、アイデンティティの観点での分析では、山地民生徒の過半数が「自民族」と「タイ人」の複合アイデンティティを持つことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目である令和元年度は、山地民教育に関する基礎情報の収集および課題①・②に関する予備調査を実施する計画であった。仏教学校において課題①に関する調査が実施できた。しかし、ほかの学校での調査や課題②に関する予備調査は、新型コロナウイルス感染症拡大の問題から2月中旬以降フィールドワークができず、計画が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目である令和2年度は、課題①の本調査を計画している。1年目に実施できなかった課題②の予備調査も行いたい。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、現地でのフィールドワークが難しいことが予測される。当面は文献調査やインターネットを活用した調査を中心に行い、情勢を見ながらフィールドワークを検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度より学内の配置転換により、所属が変わり、予想よりも校務のエフォートが高まった。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初の計画より現地での調査が十分にできなかった。2019年度にできなかった調査を2020年度に実施したい。
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