研究課題/領域番号 |
19K14121
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
MATSUDA DEREK お茶の水女子大学, 国際教育センター, 講師 (90817272)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多文化教育 / トランスナショナルな移動 / ルーツとルート |
研究実績の概要 |
【2019年度計画】 2019年度には、先行文献をまとめながら、関西地域のペルー人コミュニティーを中心に10家族への聞き取り調査を行い、ペルーに帰国した者10名、そしてアメリカに移動した者5名の聞き取り調査を行う。調査にはICレコーダーを用いて、日本に滞在する理由、あるいは移動した理由を聞くとともに、半構造化面接を行うことで彼らがどのようなルートを辿ってきたかについて分析する。ペルー・教皇庁立カトリカ大学教育学部でシンポジウムを開催し、これまでの研究・聞き取り調査について発表し、現地の研究者との意見交換を行う。アメリカでは実践者の研究会を開催し、意見交換を行う。 【実施状況】 関西地域のペルー人コミュニティーでは4家族への聞き取り調査を行った。その他の家族については現在も交渉中である。ペルーでのインタビューは15名、アメリカでは6名のインタビューができた。ペルー・教皇庁立カトリカ大学教育学部でのシンポジウムは2021年に行う方向で話がまとまった。また、ペルーの日系人学校とはオンラインによる若者と若者をつなげるプロジェクトの草案を作成し、ペルー人の子どもが在籍する日本の学校との交流を検討している。アメリカでは全米日系人博物館研究員、ミネソタ大学移民歴史研究センターの教員3名、シカゴ美術館附属大学の教員1名、ノースイースタンイリノイ大学の証言アーカイブの研究員1名と教員1名、コロンビア大学の教員1名、ニューヨーク大学の教員1名、ニューヨーク市立大学スタテン校の教員1名と意見交換をすることができた。2020年度に行われるミネソタ大学でのシンポジウムにはパネリストとして招待を受けた。ノースイースタンイリノイ 大学の教員とは今もメールなどで意見交換し、今年の10月の日系人大会で会う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究がやや遅れている理由】 当初の予定では、日本国内でのインタビューをより多く設ける予定だった。日程が合わず、関西地区に焦点を当てたために移動が多く生じるため当初ほど多く成し遂げることができなかった。また、ペルーでのシンポジウム開催に関しては、ペルー在住の研究の協力者が産休に入ったため大学との話し合いが遅れてしまい、本人が復職した後に行うことで話がまとまった。2019年度末には新型コロナウイルスの影響で2020年度の調査や研究発表などの見通しが立たなくなった。研究の協力をしてくださっている米国およびペルーの協力者が大学の方針などで予定していたシンポジウムや研究会の中止あるいは延期が余儀なくなされ、次の調査時期についても現在は確定していない。個別にできるインタビューなどはSkypeやZoomを使用して行っていくが、その他に予定していた学会発表などが2020年度に実施できない可能性が高い。そのため、現在は執筆に力を入れて米国およびペルーで集めたインタビューや研究者との意見交換などを通じて見えてきたトランスナショナルな移動について論文を執筆中である。2020年度には「トランスナショナルな移動」と「ルーツからルートへ」に関する論文を2本執筆し、投稿する予定である。これによって2021年度以降の調査で新たに必要となる聞き取り調査やシンポジウムで発表する内容をまとめていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は国内インタビューの数を増やすためにペルー人コミュニティー内でアナウンスを出して依頼をする。また、新型コロナウイルスの影響で直接訪問することができないため、SkypeやZoomなどのオンライン媒体を用いてインタビューを試みる。2020年度には関東・東海地方の30家族にインタビューをする予定である。昨今の新型コロナウイルスのために発令されている緊急事態宣言があるため、インタビューの目処が立っていない。しかし、一度緊急事態宣言が解除された際には、インタビューの依頼をする予定である。対面での面談が難しい場合にはオンライン媒体を用いてSkypeやZoomを利用していく。また、今後は執筆活動にも取り組んでいくため、できる限り査読付きの論文投稿を目指す。2020年度の海外調査ができるか否かは年度の後半に見通しが立つと考えられるため、現在は国内の研究活動を中心に進めていくこととする。 執筆活動では、「トランスナショナルな移動」と「ルーツからルートへ」をテーマに2本の論文を投稿する予定である。2019年度の調査から見えたトランスナショナルな移動を行う人々の教育に対する考え方やその子どもが移動する親を見て思うことなどについて聞き取り調査をすることができたため、先行研究をまとめた後に調査対象者の声を参考に議論を深めていく。また、「ルーツからルートへ」という面では、調査対象者にとってのルーツとルートの関係が会話の中で垣間見ることができたため、そのことについてもまとめ調査対象者が持つアイデンティティに関する考え方を提示していく。
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