本科研で行っていたアフガニスタンにおける紛争と教育に関する研究では、初等・中等教育へのアクセスがアフガニスタン紛争によってどのような影響を受け、更に子供が居住する各コミュニティの紛争に対する教育のレジリエンス能力がどの程度存在し、レジリエンスとして有効な具体的な活動の効果が何であるのかに関する研究を継続し、当該研究は論文にまとめハイインパクトジャーナルに出版した。 また、本科研の東ティモールにおける紛争と教育に関する研究では、令和5年3月に東ティモールに渡航した際に教育省及び財務省からGIS情報とEMIS情報を含む大規模データを取得し、各学校の9年間の生存率と低い生存率が集中する地理的エリアを特定する空間分析(ホットスポット分析)を行った。その結果、Mantuto/Manufahi県にまたがるIdade言語地域とCova Lima/Bobonaro県にまたがるBunak言語地域に生存率が低い学校が集中していることが分かった。研究結果は令和5年6月の国際開発学会で発表した後、令和5年8月に東ティモールに渡航してコールドスポットとして示されたCova Lima県の初等・中等学校を訪れ、関係者にインタビューを実施した。現在研究成果を論文にまとめる作業を行っている。 さらに、上記東ティモールの研究と平行して、東ティモールの大規模データを使用した生存時間解析(Cox比例ハザードモデル)による生存時間回帰分析を現在行っており、特に独立紛争後から潜在的な存在を指摘されている西部地域と東部地域の差別構造と紛争による直接的被害からの復興・開発支援に伴う社会構造の歪みと戦後20年の時間的変化が、前期中等教育修了までの学生の生存時間にどのような影響を与え、どのような学校や個人の特徴が当該生存時間を延ばすのか、に関する研究を継続している。この研究は本科研プロジェクト終了後も継続する予定である。
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