研究課題/領域番号 |
19K14123
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
郭 暁博 神戸松蔭女子学院大学, 教育学部, 講師 (90808396)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高大接続 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに明らかになったAPの効果と課題をもとに、①中国におけるAPの実施状況や効果及び課題を精緻に検証し、②APが代表する中国の高大接続がいかにして実現できたのか、③APが中国で継続・拡大できたのはなぜか、について検討する。最終目的はAPに類似する高大接続を日本に導入する可能性・必須条件を抽出することである。令和元年度には、文献調査と現地調査を行った。 文献調査では、制度設計の観点から、APに関する中国の政策動向、中国の各地域における高大接続制度の特徴、高大接続の実施機関・組織の特徴を明らかにした。具体的には、まず、近年中国の中央政府が提出された高大接続改革の実施現状と特徴、中国の地方政府における高大接続政策の特徴を明らかにした。次に、具体的な代表事例として、中国の2つの地域で実施しているAPに焦点を当て、そこにあるAPの導入した経緯、実施状況、効果および課題などを検討した。 文献調査のうえ、2つの海外現地調査を行った。1つ目は中国で開催された国際会議へ参加し、近年中国の高等教育段階における人材育成の現状、有効な育成方法、課題及び政策改革動向について、情報・資料収集をした。2つ目は中国のAP実施校(以下、研究協力校)への訪問、聞き取り調査を実施した。研究協力校の教頭に対して、AP の実施状況、効果及び課題等について聞き取り調査を行った。特に AP の高大接続における位置づけと役割、学校現場への普及・拡大の具体的方法、教員の資質能力向上の手段、大学との意思疎通の方法などを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、APを導入・普及している中国の事例をもとに検討することであった。中国の高大接続制度全体の特徴を明らかにしたうえで、APの役割と位置づけを考察し、そこから高校と大学の接続を促進する制度的要素を探ることを目的とした。具体的に、中国におけるAPの実施現場での効果・課題およびその背景を調査・分析したうえ、大学が認識するAPの効果と課題、APが中国で継続・拡大する理由を明らかにすることである。令和元年度は文献調査では、中国における高大接続制度の特徴、高大接続の実施機関・組織の特徴を明らかにした。現地調査では、AP実施校への訪問、聞き取り調査を実施した。その結果、AP の高大接続における位置づけと役割、学校現場への普及・拡大の具体的方法、教員の資質能力向上の手段、大学との意思疎通の方法などを把握できた。一方、中国における高大接続の政策関係者やAPとかかわる学外関係者の影響力に関する詳細な分析を行うには、少し時間を要する。また、APを受け入れている大学側の観点から、APの役割、効果および課題を明らかにすることを予定していたが、今年度中に十分に行えなかった点も、「やや遅れている」と判断する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、令和元年度までは主として文献調査と現地調査を行った。文献調査では、APに関する中国の政策動向、中国の各地域における高大接続制度の特徴、高大接続の実施機関・組織の特徴を明らかにした。また、現地調査では中国のAP実施校への聞き取り調査を実施した。中国における高大接続政策の特徴やAPの参加大学とAPの実施高校の受け入れ・実施状況を明らかにすることに焦点を当てて研究を進めていた。 令和2年度については前年度までに明らかになった政策状況や高校の実施状況・課題を基盤として、APを受け入れている大学側の観点から、APの役割、期待される効果および課題を明らかにする。具体的に AP の高大接続における位置づけ、大学に受け入れられた経緯、高校と大学の連携方法などを考察し、中国における高校と大学の接続を促進する制度的要素を検討する。最終的に日本への導入を念頭に置きつつ、高校と大学の接続を促進する制度的要素を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定額よりも使用額が少なかったのは旅費である。これは、当初の予定よりも安価な航空券を購入したことと、年度末に予定していた現地調査がキャンセルされたためである。 令和元年度に収集したデータ、および令和2年度に収集予定のデータを分析するために、理論的検討に力を入れる必要性が生じている。また、現地調査を改めて計画する必要が生じている。このため、必要な書籍等の購入、ならびに現地調査等に必要な旅費・人件費・謝金に使用する予定である。
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