本研究の目的は、新興国マレーシアの留学生による「国際移民システム」の構築に着目し、特に後発途上国出身者の出身国の背景と時間軸に着目して国際留学生移動を分析することである。本研究では、送出し国、受入国の社会経済政治等の状況を、時代をさかのぼって丹念に明らかにすることで、留学生個人がそれらをいかに受容し留学およびその後の進路を選択したのか、そして、留学は個人及び出身国、そして受入国にどのようなインパクトを与えているのか、留学生の選択した進路を軸に分析を行った。新興国において留学生に着目した国際移民システムの解明はなされておらず、本研究では送出し国トップであるバングラデシュに焦点を当てた。 本研究の実施期間中にちょうどコロナ感染が起こり、前半では予定していたマレーシアおよびバングラデシュでの現地調査が叶わなかったものの、その代わりに既存のデータの分析や、オンラインによるライフストーリー・インタビューを実施した。「国際移民システム」をより多角的にとらえ、新たな潮流として先進国から新興国マレーシアへの学位取得型留学、さらには留学生との境界があいまいな難民にも着目した。 後半にはコロナが収束し始め、マレーシアでの現地調査を再開した。移民が移住先で築く社会的ネットワークを、移民の出身国にとって外部資源へのアクセス増加をもたらすものとして開発にとって肯定的なものとしてとらえ直した。ホスト社会との関わりとネットワーク形成の様相を、準拠集団理論の枠組みを用いて分析し、研究結果が査読付きの国内学会誌に掲載された。以上の研究成果をまとめ、最終年度に単著として出版した。
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